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ロシアのプーチン大統領の霊的背景

ロシアのプーチン大統領の霊的背景

『ヨシェルの会』第81回の最後にこの音声動画が収録されています―

2022年2月24日(木)、ロシア‐ウクライナ危機勃発

人の生命を奪う戦争はどんな理由であれ、正当化できませんが、今回のロシアのウクライナ侵攻に関して、ロシアがこのような軍事行使に踏み切った背景を探ってみたいと思います。

大きく三つの要因があると思われますが、その要因の一つ、ロシアの宗教的背景を考察してみたいと思います。

教会の大分裂

教会史において、教会の大分裂は二度起こりました

(1)九世紀に、ビザンチウムの東方教会が、西方教会からたもとを分かち、1054年に東方正教会(正教会)と西方教会(カトリック教会)とに分裂

✫ビザンチウムは東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルの前身で、330年~1453年の間、正教会の中心地、現在はトルコのイスタンブール

✫原始キリスト信仰+ギリシャと東洋の異端が融合したのが、東方教会

✫原始キリスト信仰+ギリシャとローマ(バビロン)の異端が融合したのが、西方教会

✫西方教会にはローマ・カトリック教会とそこから派生した聖公会、プロテスタント諸教派が含まれます

先月(『ヨシェルの会』第80回)、黙示録2章で「ティアティラの教会」を考察したとき、触れましたが、「父」の意の「教皇」という称号は当初、西方教会のすべての司教に適用されましたが、西暦500年ごろ、ローマの司教に限定されて用いられるようになり、ローマの司教が「教会のかしら」として正式に認められたのは、七世紀になってからでした。

教会史のこの時代は、「ティアティラの教会」に反映されており、これが今日に至るまで、バチカンで受け継がれているローマ・カトリック教会の『教皇制度』です。

(2)十六世紀の宗教改革により、ローマ・カトリック教会とプロテスタント教会とに分裂

✫これ以降、原始キリスト信仰の復興と同時に、すべての異端的信仰にも門戸が開かれたのです

このプロテスタント教会誕生の時代は、今日(『ヨシェルの会』第81回)学んだように、「サルディスの教会」に反映されています。

さて、私たちは西方教会に関しては、これまで詳しく考察してきましたが、今日は、特に、ウクライナ侵攻に深く関わっているロシアの宗教的背景と、プーチン大統領自身の宗教的背景に目を留めたいと思います。

まず、ロシア正教の歴史から考察しましょう

ロシア正教

今日、東方正教会の中で最大の強勢を有するのは、ロシアの正教会(ロシア正教)です。ロシアが正式にキリスト教を受容したのは、988年(か989年)のことで、

✫キエフ・ロシアのウラジーミル大公によって実現しました

✫ウラジーミルに洗礼を授けたのは、ビザンチン(ビザンティン)帝国の教会でした

✫それ以降、東方正教文化がロシア文化の基盤となったのです

記事の紹介:『信仰の人プーチン大統領、キリスト教国の再建を望む』

ロシアの宗教史に関して、2月24日朝、ロシアのウクライナ侵攻直後に公開された記事をご紹介したいと思います。『信仰の人プーチン大統領、キリスト教国の再建を望む』という記事で、南ロンドンの聖マリア教会の教区牧師でジャーナリストのGiles Fraserガイルス・フレイザー氏によるものです。

ウクライナの歴史

キリスト者の皇帝バジル二世は反旗を翻した部下の将軍の蜂起に脅かされ、古代都市ビザンチンから敵の地ラスに行き、助けを求めました。賢い策略家だったビザンチン帝国のバジル二世は、「もし、ラスの大公ウラジーミルが自分を助け、反乱を鎮めてくれるなら、妹と結婚させよう。ただし、キリスト教に回心することが必要である」と条件づけました。

反乱を鎮めたラスのウラジーミルはキエフに戻り、町の全員をドニエパール川のほとりに呼び出し、大群衆の洗礼を行いました。

こうして、回心した異教徒が初めて王女と結婚したのは988年のことでした。この象徴的な行為で、ロシア正教会が誕生し、ロシアにキリスト教が広がることになったのです。

このとき、祖国ロシアの愛と融合した国粋主義と霊性の強力な目覚めが起こったのです。

ロシアの伝説(神話)では988年に、ロシア国民全員が洗礼を受け、ウラジーミルは「聖人」と宣言されました。1453年に、ビザンチン帝国が崩壊したとき、ロシア人は、自分たちを自然な後継者とみなし、ロシア人が「第三のローマ」となったのです。

ソビエト共産主義はこのすべてを粉砕しようと試みました。しかし、失敗に終わったのです。

1991年、ソビエト崩壊後の時代には〔1917年11月7日のロシア革命(十月革命)からロシア内戦を経て1922年12月30日に成立したソビエト連邦は、69年後の1991年12月25日に崩壊〕、何千もの教会が建てられ、あるいは、再建されました。今日、西洋のキリスト教とは異なり、東方では、キリスト教は繁栄しているのです。

2019年、ロシア正教のかしら、キリル総主教は一日に教会を三つ建設していると豪語しました。また、昨年2021年には、モスクワから一時間の郊外にある軍事基地に大聖堂を開設しました。

ロシア正教では、宗教的イメージは軍事的栄光と融合し、戦争メダルがステンドグラスにはめ込まれ、聖堂訪問者に、ロシアの殉教を思い起こさせています。大きなモザイクには、2014年のクリミア返還を含む、ごく最近の勝利が祝われているのです。

ソビエト連邦後のロシアのキリスト教リバイバル

このソビエト連邦後のロシアのキリスト教リバイバルの中心は、最初のキエフの聖ウラジーミルではなく、別のウラジーミルによるものです。すなわち、ウラジーミル・プーチン氏によるリバイバルです。

今回のウクライナ侵攻が、プーチン氏にとっては、霊的追求の範疇にある、と信じる人は、ほとんどいないと思われますが、ロシア正教会は、千年前のラスの地での集団バプテスマがロシアの宗教的精神形成の創設的イベントであったとし、ロシア正教会の起源をここに辿っているのです。

これが、プーチン氏の関心が、ウクライナ東部のルハンスクやドネツクよりも、はるかに キエフにある理由なのです。

第三ローマの指導者、ウラジーミル

プーチン氏はレニングラード(バルト海に面するロシアの港湾都市、州都はサンクト・ペテルブルグ)で生まれ、献身的なキリスト者の母親と無神論者の父親の家庭に育ち、母親は、プーチン氏に秘密裏に洗礼を受けさせました。

プーチン氏は洗礼時の十字架を身に着け、大統領就任以来、「第三ローマの指導者」、世界中のキリスト者の真の擁護者として自らを献げています。

キリスト教界再建にかけるプーチン氏の信仰

たとえば、プーチン氏のISIS〔イラクとシリアで発生したイスラム過激派組織〕に対する執拗な爆撃は、キリスト教の歴史的祖国に対する防衛として全身投入されたものでした。プーチン氏の2013年のスピーチにも見られるように、プーチン氏は西洋を強打する/教え込む方法として、決まって「信仰」を用いてきました。

✫「我々は、ヨーロッパ大西洋諸国の多くが、実際には西洋文明の基礎を構成するキリスト教の価値を含めた彼らのルーツを拒絶しているのを見る。彼らは、道徳的原則と、すべての伝統的アイデンティティ、すなわち、国家、文化、宗教、男女の性すらも否定している」

✫「彼らは、大家族と、同性のパートナーシップとを同一に見、神への信仰とサタンへの信仰をも同一視した政策を実施している」

と語り、プーチン氏は自らに託された霊的な神意(神の御旨)を、モスクワに拠点を置くキリスト教国(キリスト教界Christendom)を再建することとみなしているのです。

「聖なるロシア」建設

ロシアの国家的、霊的願望はただ政治的ロシア建設ではなく、「聖なるロシア」建設なのです。これは、ある意味では宗教的企画であり、ある意味ではロシアの外国政策の延長でもあるのです。

いにしえのウラジーミル大公が命じた集団バプテスマについて、プーチン氏は、「国家の構成員に正統派を採用するという彼の霊的偉業が、ロシア、ウクライナ、ベラルーシの人々を結びつける文化、文明、人間の価値観の全体的な基盤をあらかじめ決め、方向づけることになった」と、説明しました。

プーチン氏は再び同じことをしたいと、思っているのです。この目的のために、キエフが必要なのです

ロシア正教会の政治的野心

プーチン大統領のウクライナ、キエフに対する情熱がこのように純真に信仰的なものであれば、素晴らしいのですが、否定的な意見もたくさんあります。

最初に、「千年前、聖ウラジーミルがキリスト教を選んだ霊性は、今日もなお私たちとの密接な関係を大きく決定するものである」とのプーチン氏の主張にも関わらず、ロシア正教会の政治的目的に対する批判の背景には、正教会内での分裂が挙げられます

✫2019年、ウクライナの正教会はロシア正教会からの独立を宣言し、東方正教会の名目上の母教会であるコンスタンティノープルのバーソロミュー一世は、それを支持しました

✫ウクライナのペトロ・ポロシェンコ前大統領は、この独立を「モスクワの悪魔に対する、敬虔なウクライナ国家の勝利、悪に対する善の勝利、暗闇に対する光」と表現しました

✫その結果、独立に対するウクライナの主張を拒絶し、コンスタンティノープルの優位性をも拒絶したロシア正教会と、他の正教会家族との歴史的分裂が起こったのです

✫2020年にロシア正教会のキリル総主教は、ロシア正教会こそ正統派の世界的本部であると主張し、ロシア正教会はその後、世界中、特にアフリカに独自の教区を設立しました

✫現在はウクライナの正教会を、これまでの同盟関係ではなく、ロシア正教下に置こうと、考えているようです

二つ目に、ロシア正教会は公式には、政治の外に留まる、と主張していますが、真実ではないようです。

✫ソ連邦崩壊後の時代、ロシア正教会は壮大な「国家支援教会の建設プロジェクト」に組み入れられ、タバコやアルコールの輸入を含む有利な事業活動にも関与し、大きく繁栄したのです

✫ロシア正教会ほど、国家、この世に迎合して富み栄えた教会はないといわれるほど、教会と国家が結束しているのが、ロシアの国情のようです

✫キリル総主教は、昨年(2021年)の聖ウラジーミルの国家洗礼記念日には、ロシア国民に「聖ウラジーミルの改宗と正統派殉教者の血に忠実であり続けるように」と促し、「私たちの祖国、私たちの民、私たちの軍隊を愛するように」と説教したのでした

不可侵の霊的空間

「第三ローマの指導者」、世界中のキリスト者の真の擁護者として自らを献げているプーチン氏は、演説で、「ウクライナは私たち自身の歴史、文化で、不可侵の霊的空間である」という決まり文句をよく用いるようです。しかし、千年以上のロシアの宗教史にしみ込んだこの「不可侵の霊的空間」というとらえ方を危険とみなす人たちは多いのです。

祈りの課題

確かに、政治的にこの決まり文句を解釈すれば、ウクライナはロシアとの共有の地であるとの主張になり、プーチン氏にとっては、今回のウクライナ侵攻を正当化する一つの理由となるのです。

✶プーチン氏の本心が何であるかは分かりませんが、人の心の動機をすべてご存じの神が究極的には、諸国民の行動を正しく裁かれるので、御手に委ねる以外にないといえます

✶同時に、私たちにできることは、速やかな神のご介入によって「停戦」へと導かれることを切に祈ることです

✶黙示録の七つの教会への警告のメッセージの中で、キリストは、宗教が国教化され、帝国の主権を教会が担った時代を象徴する「ペルガモンの教会」を厳しく非難されました

✶この原則は、今日のすべてのキリストの教会にも適用されるべきことです

✶繰り返しますが、国家の指導者が、神の定められた秩序の一線を超えないで、賢く治めることができるように、と執り成していくことは、キリスト者の大きな役割です

✶キリストは、サタンの王国は分裂王国で、やがて滅びることを、たとえを通して語られました

今日、この世ではなく、キリスト教会の中でこの分裂が起こっているのを見ることは、私たちの時代が紛れもなく「ラオディキアの教会」に象徴された「背信の時代」で、各信徒が所属しているこの世の教会とは無関係に、信徒一人ひとりがキリストの招きに応答して、主との正しい関係に生きなければ、魂の滅びに至ることを如実に物語っているのです。

私は愛する者をみな、叱ったり懲らしめたりする。だから熱心になって悔い改めなさい。見よ、わたしは戸の外に立ってたたいている。だれでも、わたしの声を見いて戸を開けるなら、わたしはその人のところに入って彼とともに食事をし、彼もわたしとともに食事をする。勝利を得る者を、わたしとともにわたしの座に着かせる。それは、わたしが勝利を得て、わたしの父とともに父の御座に着いたのと同じである。    (黙示録3:19-21)

ヨシェルの会・サイト