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第290号  エステル記9章

この世の劣等な政府破綻後樹立されるダビデ王朝、メシヤの到来

現在の世界的な政治的混乱、危機は「最終的な贖い」、メシヤの時代到来のまさに前駆体、とラビたちは言う。イスラエルの三回目の総選挙が行われるなら、その日はイスラエルの「プリムの祝日」に該当。この日、「ユダヤ人撲滅」の陰謀が覆され、背後に隠されていた神のご計画が顕された。果たして、『エステル記』の語る、国家危機を超えた明るい未来がもたらされるだろうか…

第十二の月、すなわちアダルの月の十三日、この日に王の命令と法令が実施された。ユダヤ人の敵がユダヤ人を征服しようと望んでいたまさにその日に、逆に、ユダヤ人のほうが自分たちを憎む者たちを征服することとなった。ユダヤ人たちは、自分たちに害を加えようとする者たちを手にかけようと、クセルクセス王のすべての州にある自分たちの町々で集まったが、だれもユダヤ人に抵抗する者はいなかった。彼らへの恐れが、すべての民族に下ったからである。諸州の首長、太守、総督、王の役人もみなユダヤ人たちを支援した。モルデカイへの恐れが彼らに下ったからである。実際、モルデカイは王宮で勢力があり、その名声はすべての州に広がっていた。…
これはアダルの月の十三日のことであり、その十四日に彼らは休んで、その日を祝宴と喜びの日とした。それで、城壁のない村に住む田舎のユダヤ人は、アダルの月の十四日を喜びと祝宴の日とし、互いにごちそうを贈り交わす日としている。…
実に、アガグ人ハメダタの子で、ユダヤ人すべてを迫害する者ハマンは、ユダヤ人を滅ぼそうと企んで、プル、すなわちくじによって決め、彼らをかき乱して滅ぼそうとしたが、そのことが王の耳に入ったときに、王は書簡で命じ、ハマンがユダヤ人に対して企んだ悪い計略をハマンの頭上に返し、彼とその子らを柱にかけたのであった。こういうわけで、ユダヤ人はプルの名にちなんで、これらの日をプリムと呼んだ。こうしてこの書簡のすべてのことばにより、また、このことについて彼らが見たこと、また彼らに起こったことにより、ユダヤ人は、自分たちとその子孫、および自分たちにつく者たちが、その文書のとおりに毎年定まった時期にこの両日を守り行い、これを廃止してはならないと定めた。…
ユダヤ人モルデカイと王妃エステルがユダヤ人に命じたとおり、また、ユダヤ人が自分たちとその子孫のために、断食と哀悼に関して定めたとおり、このプリムの両日を定まった時期に守るようにした。エステルの命令はこのプリムに関する事柄を義務づけ、書物に記された。    エステル記9章(新改訳2017)

政治不信、社会の治安の低下は世界的な現象で、2019年は各国が混乱のままで年を終えようとしていますが、イスラエルもその例にもれません。
イスラエルは、ネタニヤフ首相が今年二回目の総選挙後、指示された期限までに連立政権を形成することができず、左翼青白党の党首ガンツ氏にも連立政権を組むチャンスが与えられましたが、同様に不成功に終わり、現在、一年以内に第三回目の総選挙という異例の事態を控え、政治的行き詰まりに直面しています。

イスラエル議会クネセトは、12月11日の終日までに首相候補を見つけることができなければ、法律の定めにより、九十日以内の最後の火曜日に選挙を行うべきことを命じています。この日は2020年3月10日(火)で奇しくもプリムの祝日に該当します。
イスラエルではエステルの時代以降、アダルの月の十四日と十五日がプリム祭として祝われています。宗教的、国家的祝日には選挙は行われないので、クネセトは選挙日を最大十日延期することができますが、ラビたちの関心は、第三回目の選挙日が神のご計画が隠されたプリムの祝日に当たることに寄せられています。
冒頭に引用したエステル記9章は、ユダヤ人撲滅を企てたハマンがユダヤ人指導者モルデカイを死刑にするために自宅に立てた柱に、モルデカイではなく自分と子らが掛けられ、しかも、自分がくじで定めたアダルの月の十三日に王の裁きが自らに下った出来事を記しています。
この出来事に因み、絶望から最終的な贖いへの道が開かれることが期待されているのです。

イスラエルでは1948年の建国以降も、聖書史が証ししている通り、至る所で神のご介入による奇蹟が起こっていますが、霊的なラビたちによる預言の成就の形での奇蹟も多々見られます。故ラビ、イツチャク・カドゥリ師は四十年前に、選挙による政府形成、組閣が失敗に終わった後、メシアが顕れると預言しました。2019年は、二度目の選挙でも政府が形成できなかったというイスラエル史上前例のない衝撃に見舞われ、ラビたちの間で、人類史を司っておられる神の主権、思惟、預言的指示を仰ぐ傾向が強くなっています。


サンヘドリンの長のラビ、ヨエル・シュワルツ師は、この世の劣等な政府が破綻した後、ダビデ王朝が樹立されることと現在の政治的混迷とを関連づけ、ヘブル語で「隠された」の意から派生した『エステル記』に記されている「プリム祭」とイスラエルの選挙に関連があることを指摘している一人です。
政治に影響を及ぼしている神、その影響力がこの世の目からは隠されているが、今直面している第三回目の選挙という事態は、民にこの世の政府が期待できず、信頼に値しないものであることを明確にし、必然的に、イスラエルには神ご自身の御旨のダビデの血筋のメシアの支配が必要であることを明確にするものである、と。

また、シオンの山のダビデ王の墓のラビ、ヨセフ・ベルガー師は、トランプ大統領が弾劾裁判の危機に直面していることとイスラエルの選挙危機が同時に起こっていることに言及し、選挙日がプリムの祝日に重なるとすれば、『エステル記』が伝えているように、現在の政治的混迷、危機の時代がまさに救い、メシアによる贖いの前駆体になることを示していると指摘しています。

ほぼ百三十年前、世界中に散らされていたユダヤ人が、神が約束された聖地「エレツ・イスラエル」に戻り始め、独立戦争の結果、七十二年前、諸外国の支配から解放され、1948年にイスラエルが国家として誕生しました。五十二年前には、1967年の六日戦争(第三次中東戦争)に勝利したことによって、イスラエルは近隣のアラブ諸国からゴラン高原、西岸地区、ヘブロン、エルサレムを奪還して今日に至っています。

六日戦争の勝利は紛れもなくエゼキエル書35:10-15、36:1-7ほかの預言の成就でした。しかし、今日、長い間イスラエルと和平関係にあったヨルダン王国との関係が、1994年の和平協定で合意に至った二十五年間の土地賃借契約を更新しないとのヨルダン側の昨年の声明以降、急に悪化、詩篇83篇に預言されている第五次中東戦争の火蓋が切られかねない状態に至っています。
もし、契約更新がされなければ、イスラエルはヨルダン領内の飛び地ツォハルとナハライムの使用を断念せざるを得なくなりますが、イスラエルの北部ヨルダン川沿いのナハライムは人気のある観光地で、イスラエル人がパスポートなしでヨルダン領内に入国できる「平和の島」でもあります。
この問題を契機に、イスラエルでは新たな動きが起こっています。それは、これら飛び地と引き換えに、ヨルダンが、管理する名目で神殿の丘にイスラエルとの合意なく駐屯させてきたワクフをこの際取り除き、イスラエルの内政に干渉しないようにとのヨルダンへの要請です。

他方で、イスラエルの主任ラビと二百人以上のラビたちは11月下旬、トランプ大統領が神のイスラエルへの使命、―喜びと希望を世界に届け、正義を奨励強化し、永久の平和をもたらす―、を認識し、率先してエルサレムをはじめ、ユダヤとサマリヤ、ゴラン高原に対するイスラエルの権利を全面的に認め、イスラエルを強力に支持していることに対し、感謝の手紙を送りました。
ラビたちは二千五百年前のエレミヤの預言
再びあなたはサマリアの山々にぶどう畑を作り、植える者たちは植え、その初物を味わう。…イスラエルの神、万軍の主はこう言われる。『わたしが彼らを元どおりにするとき、彼らは再び次のことばを、ユダの地とその町々で語る。「義の住まい、聖なる山よ。主があなたを祝福されるように。」(エレミヤ書31:5、23)
を引用し、就任以来、トランプ大統領のイスラエルに対する画期的な政策を預言の成就とみなしています。

また、アブラハムへの神の約束
地のすべての部族はあなたによって祝福される。(創世記12:3、18:18)、 あなたの子孫を空の星のように増し加え、あなたの子孫に、これらの国々をみな与える。あなたの子孫によって、地のすべての国々は祝福を受けるようになる。(創世記26:4)
ほか、神の言葉に則って、トランプ大統領に、モーセの後を引き継いでカナン入植を達成したヨシュアへの神の祝福を適用し、「どこに行っても主があなたとともにおられるので、恐れたり、落胆することがないように」と励ましました。
米国内で「弾劾裁判ほぼ不可避」の窮地に追い込まれている大統領にとって、何と時機にかなった励ましでしょう。神からの祝福は何にもまさる力で、奇蹟的な打開への道が開かれるに違いありません。
折しも、イスラエルのネタニヤフ首相も収賄罪で起訴され、首相は自らを、失脚させるための陰謀、クーデターの犠牲者であると反論していますが、イスラエルの政治的混迷は輪をかけて深まるばかりです。

世の終わりを扱った映画でイスラエルで視聴率をあげている製作者のユバル・オバディア氏は、イスラエルの選挙について一ヶ月以上前に、ユダヤ教の口伝律法書『タルムード』と、情報源として『ティクネイ・ゾハル』を引用して、総選挙が成功しないと予測しました。
彼の発言を要約すると以下のようになります。
「世俗の政府が崩壊後、救い主メシアの王国がこの世の努力とは無関係に突然到来する。過去百年、神の御旨はイスラエルを構築することで、第二次世界大戦時のユダヤ人虐殺の後でさえ、イスラエルは万難を排して建て上げられてきた。神のご計画によって、建国以来多くの政府がイスラエルを支配してきたが、これは神の最終的な贖いの前の七十年で、今やそのときは終わった。2019年には、五十もの同性愛者のパレードがあったが、これはイスラエルの民がシナイ山で十戒を授与される高みに至る前にエジプトでの隷属下、最低のレベルに置かれたと同じように、栄光の贖いの前の最低のレベルへの沈下を物語っている。言い換えれば、神は現在、邪悪な人々、邪悪な政府が自らの墓穴を掘るのを許しておられるので世界的に大混乱が起こっているが、世俗の政府が陥落後、贖いはイスラエルで始まり、世界中に広がる。ゆえに、不安になったり、争いを起こしたり、怒ったりするのではなく、今はただ神に信頼するときである」と。