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第301号  エゼキエル書38:2-23

 新型コロナ感染症と「ゴグ・マゴグの戦い」の預言

「ゴグ・マゴグの戦い」の直前のイスラエルの前提条件は今日、すべてそろっている。神はこの戦いを終結させるため、核、あるいは疫病、あるいはその両方を用いられるのだろうか?…

「人の子よ。メシェクとトバルの大首長である、マゴグの地のゴグに顔を向け、彼に預言せよ。『神である主はこう言われる。メシェクとトバルの大首長であるゴグよ。今、わたしはおまえを敵とする。わたしはおまえを引き回し、おまえのあごに鉤をかけ、おまえと、おまえの全軍勢を出陣させる。それはみな完全に武装した馬や騎兵、大盾と盾を持ち、みな剣を取る大集団だ。ペルシアとクシュとプテも彼らとともにいて、みな盾を持ち、かぶとを着けている。ゴメルとそのすべての軍隊、北の果てのべテ・トガルマとそのすべての軍隊、それに多くの国々の民がおまえとともにいる。……

多くの日が過ぎて、おまえは徴集され、多くの年月の後、おまえは、一つの国に侵入する。そこは剣から立ち直り、多くの国々の民の中から、久しく廃墟であったイスラエルの山々に集められた者たちの国である。その民は国々の民の中から導き出され、みな安らかに住んでいる。おまえは嵐のように攻め上り、おまえと、おまえの全部隊、それに、おまえにつく多くの国々の民は、地をおおう雲のようになる。

神である主はこう言う。その日には、おまえの心に様々なことが思い浮かぶ。おまえは悪巧みをめぐらして、こう言うだろう。「私は無防備な国に攻め上ろう。安心して暮らす平穏な者たちのところに侵入しよう。彼らはみな城壁もなく住んでいる。かんぬきも門もない」と。それは、おまえが略奪し、獲物をかすめ奪うため、また今は人の住むようになった廃墟と、国々から集められて地の中心に住み、家畜と財産を所有した民に向かって手を伸ばすためだ。シェバやデダンやタルシシュの商人たち、およびそのすべての若い獅子たちは、おまえに言うだろう。「おまえは分捕るために来たのか。獲物をかすめ奪うために隊を構えたのか。銀や金を運び去り、家畜や財産を取り、大いに略奪しようとするつもりか」と。』……

ゴグがイスラエルの地を攻めるその日……わたしは剣を呼び寄せて、わたしのすべての山々でゴグを攻めさせる。―神である主のことば―。剣による同士討ちが起こる。わたしは疫病と流血で彼に罰を下し、彼と、彼の部隊と、彼とともにいる多くの国々の民の上に豪雨、雹、火、硫黄を降らせる。わたしは、わたしが大いなる者であること、わたしが聖であることを示し、多くの国々の見ている前でわたしを知らせる。そのとき彼らは、わたしが主であることを知る。」         エゼキエル書38:2-23


2019年12月31日に中国の武漢で勃発したCOVID-19 の疫病が七箇月余に亘り世界的大流行となり、欧州では冬場に向けて新たに急速拡大で状況は深刻化の一途にあります。2020年は予測できないことずくめで、世界中で生活様式が一変してしまいましたが、中東情勢でも9月以降急展開が起こりました。米国の仲介によるイスラエルとアラブ諸国との国交正常化の促進です。9月、10月にイスラエルとアラブ首長国連邦、バーレーン、スーダンとの和平協定が締結され、引き続きイスラエル近隣のアラブ諸国と北アフリカ諸国、―サウジアラビア、オマーン、イラク、レバノン、コモロ、ジブチ、モーリタニア、モロッコ― との間で協定が結ばれることが期待されています。

非常に興味深いことに、すでにイスラエルと国交正常下にあるエジプト、ヨルダン王国と、これらのアラブ諸国はみなイスラエルを取り囲む内周諸国で、これらの諸国は冒頭に引用したエゼキエルの預言、「ゴグ・マゴグの戦い」に加わる諸国として名が挙げられているイスラエルの外周諸国とは一線が画されています。このことから、先月号で考察したように、『第五次中東戦争』の陰謀(詩篇83篇)が未遂に終わった後、イスラエルにしばしの和平が取り戻された時点で、ゴグによる略奪戦争「ゴグ・マゴグの戦い」が起こることが予測されます。

世の終わりの最後の七年に関して聖書が何を告げているかについてはさまざまな解釈がありますが、明確なことは、イエス・キリスト支配の神の国、―メシアの御国― が地上に具現する七年前に、反キリストがイスラエルと和平協定を結び、三年半の時点で契約が破棄され、サタン、反キリスト、偽預言者による『汚れた三位一体』、獣の体制が敷かれ、獣のしるしを受けない神の民は迫害され、多くが殉死するということです。おそらく、エゼキエル書の38章、39章の出来事は反キリスト出現の直前に神の測り知れないご計画の下で勃発すると予測され、大首長ゴグは神の御目的のために抵抗できず、引き回されるかのようです。

これら二章の描写から、「ゴグ・マゴグの戦い」勃発前のイスラエルに関して、四つの前提条件を挙げることができます。

1.ユダヤ人は国外四散から帰還して、「イスラエルの山々」や「イスラエルの中心地」に平和裏に住んでいる 2.ユダヤ人は約束の地、―聖地― に、非武装で安心して住んでいる 3.イスラエルには巨大な富がある 4.現在ヨルダン・ハシミテ王国の領土である死海の東側の地、―「ハモン・ゴグの谷」― がこの戦いの終了時点で、イスラエルの国境線内にあることから、この戦いの前か、あるいは、戦いの最中に、イスラエルの領土が現時点より拡大されていることがうかがえる

イスラエルは1948年の建国以来、奇蹟的な経済成長を遂げ、幾つかの戦争に勝ち、世界最強の軍事国になりましたが、いつも近隣諸国からの威嚇にさらされ、国民は警報が鳴ると防空壕に逃げこむ生活を強いられ、今日に至るまで非武装、平和裏に住むことは一日としてありませんでした。しかし、昨今のアラブ諸国との国交正常化で、一気に1.と2.の条件が満たされようとしています。

また、イスラエルは石油埋蔵量の豊富なアラブ諸国に囲まれ、聖書の約束にもかかわらず、中東で唯一の原油、天然ガスの資源に恵まれない不思議な国でした。しかし、神のご計画のときが満ち、二十一世紀になって巨大な埋蔵量の天然資源が内陸と沖合の両方に相次ぎ発見され、商品化に向けて世界中から事業権獲得の触手が延ばされており、さらに、ダイヤモンドに勝る希少な宝石もカルメル山で発見され、イスラエルは今や世界最大の原油輸出国になることが期待されています。したがって、3.の条件も今世紀に入って初めて満たされることになったのです。

また、4.に関しては、イスラエルとヨルダン王国との間には和平協定の一環として二十五年来の土地取引協定があり、ナハライムなどヨルダン川沿いにイスラエルの飛び地が認可されてきましたが、昨年11月、協定満了で延長不可とされたため、問題が尾を引いていました。しかし、コロナ禍を契機に中東和平交渉への機運が高まっている今日、代替案でイスラエルの領土がヨルダン川の東側に及ぶ可能性が視野に入ってきました。イスラエルは2015年にヨルダン王国との国境線にフェンスを設立し、現在、パレスチナ人の出入国を規制していますが、代替案でフェンスが取り除かれることになれば、2.の条件を一層確立することになります。

このように、「ゴグ・マゴグの戦い」直前のすべての前提条件は今日、整っています。

エゼキエルが挙げた戦いに加わる主要国、あるいは民の名を今日の国名、地理的場所に置き換えると、「メシェクとトバル」はソビエト連邦、「マゴグ」はロシア、「ペルシア」はイラン、「クシュ」はエチオピア、「プテ」はリビア、「ゴメル」は黒海北部の民、「べテ・トガルマ」はトルコとなり、すべてイスラエルを取り囲む外周諸国で、イスラム教国ですがアラブ諸国ではありません。

これらの国々の多くは、「第五次中東戦争」の陰謀に直接は関わらなくても、イスラエルを敵とした内周諸国に背後で軍事的支援をすることで間接的に関与していたのでした。たとえば、レバノンのシーア派系イスラム原理主義組織ヒズボラやガザ地区とヨルダン川西岸のイスラム教原理主義組織のハマスはイラン支援下のテロリスト組織です。

エゼキエルは、多くの国々の加勢を得て、大軍でイスラエルに押し寄せる大首長ゴグの悪徳な動機に

おまえは分捕るために来たのか。獲物をかすめ奪うために隊を構えたのか

と疑問を投げかけ、抗議する数箇国、すなわち、参戦はせず傍観している国々、人々の存在を描写しています。「シェバやデダンやタルシシュの商人たち、およびそのすべての若い獅子たち」です。

アラビア半島南部の砂漠地帯の古代王国、今日のイエメンや古代エドムの地の南に住んだアラビア人、おそらく今日のサウジアラビアやアラブ首長国連邦をはじめとする湾岸諸国、また、スペインの南部、あるいは、さらに遠方の英国の人々とその衛星国の人々に言及されているようです。「タルシシュ」をスペインではなく、英国とみなせば、かつての大英帝国の衛星国、派生国は数知れず、米国、カナダ、豪州、ニュージーランド、インドなども「その若い獅子」に数えられることになるかもしれません。

今日、イスラエルに敵対している主要な国々はイランとトルコで、その友好国はロシア、中国ですが、中国の「万里の長城」は八世紀に「ゴグとマゴグの城壁」と呼ばれたのでした。「ゴグ・マゴグの戦い」のシナリオは、急激に変わり始めている昨今の中東情勢にますます合致の傾向にあるようです。

しかし、イスラエルと中東のアラブ諸国、アフリカのイスラム諸国との和平協定の仲介を進めているトランプ大統領は、イランとイスラエルの国交正常化にも大変な意欲を示し、11月3日の大統領選挙で再選されれば、取引に着手する最初の国はイランになると予告しました。COVID-19で大きな打撃を受け、GDPが27%減少し、三年間のうちに富国から貧国に陥ったイランに対し、復興の手助けをしたいと、10月23日のイスラエルのネタニヤフ首相との会談でイスラエルの長年の宿敵イランを含む諸国との和平協定を提案したのでした。

イランはペルシャ帝国時代、バビロン撲滅直後にイスラエルを聖地に帰還させ、神殿建設を奨励、援助し、同じセム族のイスラエルには友好的で、預言者ダニエル、献酌官ネヘミヤ、王妃エスタはみなペルシャ王に仕え、大きな感化を与えたユダヤ人でした。今日イランの国民はイスラエルに友好的で、今後、「ゴグ・マゴグの戦い」が意外な展開を見せることになるかもしれませんが、聖書の預言は必ず成就します。

エゼキエルが告げているように、この戦いに対する神のご計画は、世界中の民がイスラエルの神こそ「聖なる主である」ことを知ることです。

エゼキエルが39章9-16節でスペースを割いて詳述している死者の葬り方には興味深いものがあります。そこには、特定の人たちだけに死者の取り扱いの権限が与えられ、埋葬後地を聖める手立てを厳重に踏むことが語られていますが、核戦争後の事後処理とみなされる一方で、今年大流行したCOVID-19の事後処理ともみなされるからです。

今後、現在の感染症より致死率のもっと高い疫病に変異することが考えられ、神がこの疫病を裁きの一環として用いられる可能性は十分あるのです。