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生誕九百年後の今日も世界を鼓舞するマイモニデス、―ユダヤ人医師で哲学者でトーラ学者― の生涯

生誕九百年後の今日も世界を鼓舞するマイモニデス、―ユダヤ人医師で哲学者でトーラ学者― の生涯 

マイモニデスの感動的な生涯 

2018年9月

通称ラムバムこと、マイモニデス、―ラビ、モーゼ(モシェ)・ベン・マイモーン―
マイモニデスは、ほぼ九百年前にスペインのコルドバで生まれて以来、ユダヤ人の思想、トラーの/律法研究、天文学、医学に多大な影響を及ぼしてきた。

ヘブル語(旧約)聖書の注釈者として、通称ラムバムの名でよく登場。
中でも創世記やヨブ記の天体や大自然、人の生態などに関する聖句の解釈に造詣が深かったマイモニデスが、その生涯を神と、異邦人をも含めた助けを必要としている人々に献身的に尽くしたことを、彼の生誕九百年祭の記事で知った。
神の真の証人としてのマイモニデスの利他的な歩みは感動的であった。
生涯を通して神の掟に忠実であったマイモニデスを神が大きく祝福され、中世の医師たちのレベルをはるかに超えた洞察を彼に与えられたことが、彼の言動、思考、視点の端々からうかがえる。
自ら、ディアスポラ(ユダヤ人の国外四散)の苦境に置かれながら、神と人々を愛し、生涯を献身したユダヤ人医師、マイモニデスの生涯の証しの片鱗をご紹介しよう。

多大な医学的遺産

中世の哲学者であり医師でもあったラビ、マイモニデスは、MRI や CT スキャン、X線、アスピリン、抗生物質、血圧計はおろか、温度計でさえ発明の数世紀前に、病気よりもむしろ患者を全体的アプローチで治療し、節度節制と疾病予防に力を入れた、卓越した医師であった。
➪備考5(下記)

この偉大なる賢人は、特に彼の人生の最後の十年間、カイロのスルタン(イスラム教国君主)に宮廷医師として仕え、医学と患者に献身し、喘息、毒と解毒、痔と消化、同棲と健康増進についての医学誌を含む十巻の印象的な作品をアラビア語で書き、また、アラビア語、シリア語、ギリシャ語、スペイン語、ペルシャ語、ベルベル語の薬物名の用語集も書いた。イスラエルと海外のユダヤ人医師たちは、世界中の医師たちに読まれている「ヒポクラテスの誓い」ではなく、マイモニデスが作った「医師の宣誓」を唱えている。

マイモニデスの宣誓
永久の神よ、汝は汝の生き物の生命と健康を見守るために私を任命されました。
私をいつも、医術に対する私の愛で働かせてください。
貪欲や物惜しみ/けちや、栄光や高い評判への渇望のいずれにも、私の心を従事させないでください
真理と慈善の敵は簡単に私を欺き、汝の子らに良いことをする私の高尚な目標を忘れさせることができるので。
私が患者を、苦痛のさ中にある仲間の生き物として以外の何ものとしても見ることが決してありませんように。
私が取得したものをいつも修正し、いつもその領域を拡張するために、私に強さ、とき、機会を与えてください。
なぜなら、知識は測り知れず、人の霊は、毎日それ自体が新しい要求で豊かになるべく、無期限に広がることができるので。
人は今日、昨日の間違いを発見することができ、明日、今日確信していると思っていることに新しい光を得ることができるので。
おお、神よ。汝は汝の生き物の生命と死を見守るために私を任命されました。
私はここにおります。私の職務に対し用意ができています。
今、私は私の召名に応えます。

➪備考1
✶世界中どこであれ、戦地であろうと被災地であろうと、災いが起こると率先して医師団を送り出し、先端医科学、工学を駆使して人命救助に当たるイスラエル。全世界に赴くユダヤ人医師の献身を動機づけているのは、まさに「マイモニデスの宣誓」である
✶神の掟を守り、神の御旨に従って自らをささげる「神の奴(ぬ)僕(ぼく)」の従順さが、「イスラエルの残りの者」には見られる
➞詩篇40:6-8、新約聖書では、ヘブル人10:5-14ほか

英訳された『モーゼ・マイモニデスと医学の実践』

医学はマイモニデスが臨床に携わって以来、九世紀の間に驚くべき進歩を遂げたにもかかわらず、マイモニデスの医学誌はほぼ五十年近くかけて英語に翻訳され、『モーゼ・マイモニデスと医学の実践』と呼ばれる本が、フレッド・ロズナー教授、サミュエル・コテク教授、ケネス・コリンズ教授によって書かれ、編集され、数年前に医学生を指導し、医師を鼓舞するためにハイファで出版された。

マイモニデスは、ユダヤ人にイスラム教を押しつけることを目指した過激なイスラム教徒から逃れるため、家族と一緒にスペインからモロッコへ行き、後にエジプトに移り、そこで亡くなった。彼の遺体はガリラヤ湖のほとりのティベリアに埋葬された。

マイモニデス自身は規則正しく、かつ、バランスの取れた食事を提唱したが、彼はスルタンの宮殿で医師として懸命に働いたので、夜、自宅があった宮殿に近いフォスタトの町に着いたときには、疲れ果て、空腹状態なのが常であった。
そのことを彼は、「私は、控室がいつも異邦人とユダヤ人でいっぱいなのを見たものだ…私は彼らを癒やすために診療室に行き、彼らの病気の処方箋を書いた…夕刻まで…そして、私は極めて憔悴していた」と書いた。
学者の中には、マイモニデスが医師として終わりのない仕事のために働きすぎ、健康が低下し、時期尚早の死を迎えたことをほのめかす者たちが少なからずいた。

マイモニデスは、宝石証人であった兄弟デイヴィッドが海で亡くなった後、三十七歳のとき医業に就いた。彼は、自分自身と自分の家族に加え、亡くなった兄弟の妻と甥を養うための収入が必要であった。中世のラビは、専門職として医学を確立した古代ギリシャの医師ヒポクラテスと、著名なグレコ・ローマの医師、外科医であり哲学者であったガレノスから医学と解剖学について多くを学んだ。

➪備考2
✶兄弟が死亡した場合、モーセの掟では、「買い戻しの権利のある近親者」が、残された兄弟の妻子の面倒を見ること、―「夫の兄弟としての義務」を果たす役割― が義務づけられていた
➞申命記25:5-10

『ヘブル語聖書』に裏づけられたマイモニデスの卓越した医学知識

マイモニデスはほとんど手術に言及しなかったが、患者の病気を治療するために非常によく、植物、―果物と野菜の両方― を論じた。ダイオウ(ルバブ)のように、ある植物は、身体から有害な体液を一掃するために用いられた。他方で、他の植物は、偏頭痛、喘息、咳や便秘の治療に用いられた。
マイモニデスが収集/採集した薬草には、ディル、フェンネル、フェヌグリーク、ヒソップ、ビートジュース、ホウ砂、セロリ、シナモン、花梨(かりん)、サフラン、ゴマ、甘草と松の実があった。

➪備考3
✶モーセの掟は身体を傷つけること、切ることを禁じていることから、できれば身体にメスを入れる外科手術は避けたほうがよいと考えられる
➞レビ記19:26-28、21:5
✶聖書は「癒やす植物」に言及している
➞創世記9:3、エゼキエル書47:12

マイモニデスは、喘息に空気の質が関連していることを理解していた。
また、瀉血(シャケツ)は、治療としてアラブの医師によって一般的に使用されていたが、マイモニデスはそれが危険である可能性を悟り、その使用に注意を促した。

➪備考4
✶聖書には至るところで、血の取り扱いに対する警告が記されている
➞レビ記17:10-12 血は生命、19:16 血を流してはならない、7:26-27 血を食べることの禁止、創世記9:5-6 要求される血の値、ヘブル人9:22 血は生命の本質、罪は生命を奪う
✶瀉血(シャケツ)とは、症状の改善を求める治療法の一つで、患者の血を抜くことが繰り返された

十二世紀にマイモニデスが観察を通して理解していた栄養と生活様式の議論は、今日にも関連している。マイモニデスは、私たちが呼吸する空気をきれいに保つことについて、また、適切な食事療法を守り、「感情、運動、睡眠と排泄を規則正しくすること」について多くを書いた。
マイモニデスは喘息の心身医学的側面と病気に対する全体的なアプローチを指摘さえした。
ちょうどアレクサンドリアからカイロに移り、より良い空気で喘息が改善され、マイモニデスは「人々は極度な寒さや暑さのときや、食べた直後に運動してはいけない」と書いた。

➪備考5
✶マイモニデスは、そのときそのときの症状の緩和に努める「対症療法」ではなく、患者の症状、疾患の原因に目を留め、その根本原因を取り除くため、心を含む身体全体を治療の対象とした「原因療法」を心がけたと思われる
✶聖書では、人の病の根本原因は自分自身の罪である
➞申命記28:58-59、詩篇34:15-22ほか、新約聖書では、ぺテロ第一2:24(イザヤ書53:1-5)キリストによる贖罪がもたらした癒やし

健全な食生活、生活習慣の奨励

よく知られていたように、マイモニデスは人々に、食べ飽きるほどになってようやく食卓から立ち上がるような飽食をしないようにと促した。また、全粒穀物のほうが白い小麦粉より消化がよい、また、「ぶ厚い肉」は消化のため「胃に負担をかける」ので避けるべきであると、助言した。彼は、家禽だけでなく、小さな塩水魚をも勧めたが、大量の魚を消費することは支持しなかった。それは明らかに、当時冷蔵庫がなかったので、魚は塩漬けで保たれており、その魚を彼は健康を促進しないと判断したからのようである。
マイモニデスは、簡単に消化されるということで乳製品を勧めたが、乳製品は「頭痛に苦しむ人には有害」と考えた。彼は、果物と野菜を定期的な日常食物として摂取することと、食後、すでに消化が始まって二時間ほど経ったころ、冷たい水を飲むことを強く支持した。

ラムバム病院創立八十周年記念

マイモニデスは全部で十二巻の医学専門誌を書いた、その中には『毒とその解毒に関する医学誌』、『喘息に関する医学誌』、『痔に関する医学誌』、『薬物名の用語集』、『同棲に関する医学誌』が含まれる。マイモニデスの医学誌は、後世、アジア、アフリカ、ヨーロッパの医学研究の礎となり、今日も驚くべき関与を及ぼしている。このように、マイモニデスの医学への多大な貢献のゆえに、八十年前、イスラエル共和国樹立の十年前にハイファに建てられた病院が彼に因み、「ラムバム」と名づけられたことはふさわしいことであった。

今日、イスラエル北部で最大、最先端を行くこの「ラムバム」病院の創立八十周年記念は、とりわけマイモニデスに関する記事の掲載で際立てられた。2010年に設立されたオンラインのオープン-アクセス医学ジャーナル (https://www.rmmj.org.il)、ラムバム・マイモニデス医学雑誌(RMMJ)上に掲載されたこの記念記事は、病院の局長ラファエル・ベヤー教授、ジャーナル編集長、ラムバム医療センターの新生児科医のシュラガ・ブレザー教授、ジャーナル准編集長のカール・スコレキー教授、腎臓病の専門家で、テクニオン-イスラエル工科大学分子医学研究室長らによって書かれた。

その記事の中で、マイモニデスは「自身の民族と信仰のゆえに迫害を経験し、控えめに言っても、すべてにおいて彼が表した気質とは全く相反する国民の間に亡命する身となった」と、著者たちは書いた。しかし、「自身のコミュニティで非常に尊敬されたマイモニデスは、自分自身の民族を助けるだけでは十分ではないと、信じていた。彼の働きと生涯は、著名なアラブ人とイスラム教徒の哲学者、科学者、医師に多大な影響を与えた。彼の著作は多くの言語に翻訳され、我々が今日知っているように、ユダヤ教にも永続的な影響を与えた。彼の視点は簡単、―知識は恩恵を受けることができるすべての人と共有するためにある― というものであった。」

➪備考6
✶マイモニデスの人生の基盤は『ヘブル語聖書』にあった
➞ミカ書6:8、 申命記6:4-9、 箴言2:10-11、箴言1:7、箴言11:25ほか
➞新約聖書:ヘブル人13:16、コリント人第二8:1-15 パウロ、コリントの教会の人々に、信仰、御言葉伝授、知識、熱心、愛、恵みのわざ(施し、献金)にあふれるようにと奨励


上述の記事には、この医学ジャーナルが最新医学について世界中の医師に知らせるだけでなく、それを読んだ医師の生命をも実際救ったということが記されている。
ある医師は南アメリカの高地を旅行していて、気分が優れなかった。彼は自分の症状が急性山岳病であること気づいたが、彼はどのような治療が必要かを思い出すことができなかった。
医療や医療コンサルタントからははるかに遠い僻地、しかし、コンピュータが近くにある、そこで、彼は妻に、この症状についての良い記事を見つけ購入するよう頼んだ。彼女はインターネット検索を行ない、検索の結果、先端医療記事が利用可能なサイト「RMMJ」を見つけ、しかも無料で購読できることに驚いた。その医師は記事を読むために支払う必要は全くなく、三千メートルを超える高度の旅先で妻が彼にサイト上の記事を読んで聞かせ、おかげで彼は、自分の症状にぴったりの必要事項を見つけることができ、旅の残りを快適で健康な休養のときにすることができたのであった。
感動した医師は家に戻るや、「RMMJ」に感謝のメールを送った。だれでも必要な人が無料で利用できるように開設されたサイトでこの記事を自由に入手できたことをどんなに感謝しているかを分かったのであった。

知識は生命を救う

「これは『知識がいかに生命を救うことができるか』のほんの一例である。人生を変える影響は、すべての医療専門家が達成したいと願っていることである」と、ベヤー教授、ブレザー教授、スコレキー教授は締めくくった。
マイモニデスは、彼の視点を共有、実践している後世の後継者の存在を知って、間違いなく喜ぶことであろう。

➪備考7
知恵、知識を求めること、すなわち、神ご自身、神からの賜物の重要さを聖書は語っている
ダニエル書2:21、詩篇119:66、伝道者の書7:12、列王記第一3:5-12ほか
➞ホセア書4:6「わたしの民は知恵がないので滅ぼされる。あなたが神のおしえを忘れたので、わたしもまた、あなた(イスラエル)の子らを忘れる」