生誕九百年後の今日も多大な栄光を与え続けている「イスラエルの残りの者」、中世のラビで卓越した医師マイモニデス
国家、国土、原語喪失後、千九百年も後に国家として復興した唯一の民イスラエルの不思議
私があなたの前に置いた祝福とのろい、これらすべてのことがあなたに臨み、あなたの神、主があなたをそこへ追い散らしたすべての国々の中で、あなたが我に返り、あなたの神、主に立ち返り、私が今日あなたに命じるとおりに、あなたも、あなたの子どもたちも、心を尽くし、いのちを尽くし、御声に聞き従うなら、あなたの神、主はあなたを元どおりにし、あなたをあわれみ、あなたの神、主があなたを散らした先の、あらゆる民の中から、再びあなたを集められる。たとえ、あなたが天の果てに追いやられていても、あなたの神、主はそこからあなたを集め、そこからあなたを連れ戻される。あなたの神、主はあなたの先祖が所有していた地にあなたを導き入れ、あなたはそれを所有する。主はあなたを幸せにし、先祖たちよりもその数を増やされる。あなたの神、主は、あなたの心と、あなたの子孫の心に割礼を施し、あなたが心を尽くし、いのちを尽くして、あなたの神、主を愛し、そうしてあなたが生きるようにされる…
まことに、私が今日、あなたに命じるこの命令は、あなたにとって難しすぎるものではなく、遠くかけ離れたものでもない。これは天にあるわけではないので、「だれが私たちのために天に上り、それを取って来て、私たちが行えるように聞かせてくれるのか」と言わなくてよい。また、これは海のかなたにあるわけではないので、「だれが私たちのために海のかなたに渡り、それを取って来て、私たちが行えるように聞かせてくれるのか」と言わなくてよい。まことに、みことばは、あなたのすぐ近くにあり、あなたの口にあり、あなたの心にあって、あなたはこれを行うことができる…
私は今日、あなたがたに対して天と地を証人に立てる。私は、いのちと死、祝福とのろいをあなたの前に置く。あなたはいのちを選びなさい。あなたもあなたの子孫も生き、あなたの神、主を愛し、御声に聞き従い、主にすがるためである。まことにこの方こそあなたのいのちであり、あなたの日々は長く続く。あなたは、主があなたの父祖、アブラハム、イサク、ヤコブに与えると誓われたその土地の上に住むことになる。 申命記30章(新改訳2017)
申命記には、イスラエルの民が約束の地カナンに入る直前、モーセがモアブの草原で語った説教がまとめられています。
モーセはまず、民のカナン征服を前提に、その地で神が樹立される神権国家の概要に触れ、民の信仰とヤーウェ神への従順を奨励、神から祝福される人生、生命の道を選ぶようにと語り、次に、背信と異教の偶像崇拝への堕落を強い語調で警告し、神の民に不従順の結果下る懲らしめ、呪いの道、滅びを決して選ばないようにと、神の約束を何度も銘記させたのでした。
申命記28-30章は、イスラエル史が先取りされて、モーセの時代の後はるか後世に起こることになる捕囚、国家崩壊、国外四散に言及されているため、神の完全な予知能力、預言を信じない学者たちの間で「高等批評」の対象になっている箇所です。
30章は呪いの先に広がる復興の眺望で、神の御旨に忠実であったイスラエルの残りの者は、異邦人の残りの者とともに、栄光あるメシヤの御国で契約の神の支配下に戻されること、旧約時代の復興をひな型とした来たるべき究極的な復興が予見されています。一言でいえば、神の贖いのご計画は、不忠実な神の民、イスラエルの堕落のゆえに挫折させられることなく、究極的に神の側で成就させられるのです。
西暦七十年、エルサレム陥落で国を失ったユダヤ人は全世界に四散され、1948年に国家が復興されるまで、まさに呪いの状態に置かれてきました。
主があなたを追いやられる先の、あらゆる民の間で、あなたは恐怖のもと、物笑いの種、なぶりものとなる。(申命記28:37)
を地で行くユダヤ人の放浪の歴史は文字通り呪いの成就でした。
聖地をイスラム教諸国から奪還するために派遣された十一世紀から十三世紀にかけての十字軍によって、多くのユダヤ人共同体が絶滅され、数えきれないユダ人が虐殺され、1348年から1350年にかけてヨーロッパで大流行した黒死病では、ユダヤ人が根拠なく訴えられ、何千人もが焼死刑に処されたのでした。1492年にはスペインのキリスト教による異端審問で、ユダヤ人は全員国外退去が命じられ、隠れユダヤ人であったコロンブスも国外脱出の大航海に出帆せざるを得なかったのです。
1881年には、ロシアでユダヤ人大虐殺(ポグロム)が波状的に発生、第一次世界大戦時まで続いたのでした。ポグロムをかろうじて逃れた何十万人ものユダヤ人は新天地を求め、東ヨーロッパに留まったのでしたが、皮肉にも、全ユダヤ人の最悪の悲劇、ナチスによるユダヤ人大虐殺(ホロコースト)に巻き込まれることになったのです。1933年から1945年にかけて、ヨーロッパのユダヤ人は、アウシュヴィッツ強制収容所ほかの収容所で、強制労働に駆り立てられ、挙句の果ては、処刑場「ガス室」で殺害されたのでした。六百万から七百万人ものユダヤ人が、ただ神の選びの民ユダヤ人であるという理由で殺害されたのです。
世界中の多くの民族の間で、神との契約の民という唯一の特権にあずかったユダヤ人が神の御旨に応えないなら
もしあなたがこの書物に記されている、このおしえのすべてのことばを守り行わず、この栄光に満ちた恐るべき御名、あなたの神、主を恐れないなら…かつて、主があなたがたを幸せにし、あなたがたを増やすことを喜ばれたように、主は、あなたがたを滅ぼしあなたがたを根絶やしにすることを喜ばれる。あなたがたは、あなたがたが入って行って所有しようとしている地から引き抜かれる。(申命記28:58-63)が、神の預言的メッセージでした。書物に記されているとは、すでに神が顕された啓示、神の御旨への言及で、届かない高い天やはるか海のかなたに隠されているものではないので、神に従う心のある者はだれでも理解し、守ることができるのです。
29-30章は条約形式でまとめられた「パレスチナ契約」、―出エジプト後紅海を渡った直後、ミデヤンの地で民との間に結ばれた「シナイ契約」の更新―ですが、「天と地」(30:19)という修辞的表現で、契約の真の証人である神が関与しておられることが明らかです。
世界の多くの民族の中で絶滅の危機に瀕した人々はユダヤ人だけではありませんが、生きて働かれる真の神が贖いのご計画の下でユダヤ人を選ばれたという証拠はいろいろな面で見られます。
人類史上、自国から捕囚で外地に連れ去られ、長期に亘って国家としての存在と言語を失った後、再び同一の国土に戻り、古来独自の言語に戻され、国家として復興した民族はユダヤ人、イスラエル国家以外にないのです。これは通常の人類史観では説明できない現象で、最も偉大な歴史家の一人アーノルド・トインビーは、著書『歴史の研究』の中で二十六文明の興亡を追跡し、「文明は興り滅びる、二度と再興することはない」という歴史観を打ち立てたのですが、卓越した歴史家もイスラエル史を説明することはできませんでした。
イスラエルは何度も何度も興亡を繰り消しながら生き延び、国家、国土、原語喪失後、千九百年も後に国家として復興した唯一の民なのです。神の約束を考慮する余地のなかったトインビーには不可解に終わったイスラエル史は、旧新約両聖書を唯一真の神の啓示の書として信じる者には、神の民イスラエル、国家、国土、ヘブル語が神の約束通りに完全な復興を見、決して滅びることがないと確信できるのです。
預言者エレミヤはこのことを、現行の天体が滅びないかぎり、イスラエルが絶えることはないと預言し、メシヤの時代到来の文脈の中で、イスラエルを選ばれた神の御旨が、イスラエルを通して全世界が真の神に立ち返ることであることを明確にしています。
今日、イスラエル国家が存在することは、聖書が真理の書であることの証拠でもあるのです。
ヘブル語で書かれたヘブル語(旧約)聖書の注釈には、ラシーに並びラムバムがよく登場します。十二世紀にスペイン南部コルドバに生まれたユダヤ人哲学者でトーラ(モーセ五書)学者のラビ、マイモニデス(通称ラムバム)は、天文学、医学にも貢献し、九百年後の今日に至るまで多大な影響を及ぼしている「イスラエルの残りの者」に数えられる卓越した神の人です。
今日と違って、MRIやCTスキャン、X線、抗生物質、アスピリンなど解熱剤、血圧計はおろか、体温計さえもなかった中世、ラムバムは病気よりむしろ患者を全体的に治療し、日常生活における節度節制と疾病予防に尽力した優れた医師でもありました。
ラムバムはユダヤ人にイスラム教を押しつける過激なイスラム教徒の迫害を逃れ、スペインからモロッコへ、さらにエジプトに移り、人生の最後の十年間、カイロのスルタン(イスラム教国君主)に宮廷医師として仕え、医学と患者に献身し、喘息、毒と解毒、痔と消化、同棲と健康増進についてなど十巻もの印象的な医学誌をアラビア語で書き、アラビア語、シリア語、ギリシャ語、スペイン語、ペルシャ語、ベルベル語の薬物名の用語集も書いたのでした。
ラムバムが臨床に携わってから九百年後の今日、医学は目覚ましく進歩したにもかかわらず、中世に書かれた彼の医学誌が英語に翻訳され、医学生の指導、医師を鼓舞する上で多大な影響を与え続けていることは驚くべきことです。
イスラエルと海外のユダヤ人医師たちは、世界中の医師たちに読まれている、医学を確立した古代ギリシャの医師「ヒポクラテスの誓い」ではなく、「マイモニデスの誓い」を唱えているとのことですが、聖書の教えに則ったその内容は愛と謙遜に満ち、感動的です。
永久の神よ、汝は汝の生き物の生命と健康を見守るために私を任命されました。私をいつも医術に対する私の愛で働かせてください。貪欲や物惜しみや、栄光や高い評判への渇望のいずれにも、私の心を従事させないでください。真理と慈善の敵は簡単に私を欺き、汝の子らに良いことをする私の高尚な目標を忘れさせることができるので……おお、神よ。汝は汝の生き物の生命と死を見守るために私を任命されました。私はここにおります。私の職務に対し用意ができています。今、私は私の召名に応えます。
には、神を畏れ、神と神の造られた全人類に利他的に献身したラムバムの信念「自分自身の民族を助けるだけでは十分ではない」と、彼の視点「知識は恩恵を受けることができるすべての人と共有するためにある」が反映されています。 ➪記事の詳細(邦訳)はここ
このマイモニデスの医学への多大な貢献のゆえに八十年前イスラエル共和国樹立の十年前にハイファに建てられた病院は「ラムバム」と名づけられ、今日、イスラエル北部で最大、最先端を行く病院とのことで、オンラインのオープン-アクセス医学ジャーナル (https://www.rmmj.org.il) は、「イスラエルの残りの者」ラムバムの意を受け継ぎ、最先端の医学知識情報を無料で提供しているのです。