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第280号  歴代誌第一21:1-27

エルサレムの「神殿の丘」の本当の場所

2019年1月に、建っているイスラエル当局に提出された「本当の神殿の丘の場所」説、―今日、イスラム教の「岩のドーム」が建っている場所はかつてエルサレム第一、第二神殿が築かれた場所ではない― が正しければ…


さて、サタンがイスラエルに向かって立ち上がり、イスラエルの人口を数えるように、ダビデをそそのかした。……この命令は神の目に悪しきことであった。神はイスラエルを打たれた。ダビデは神に言った。「私は、このようなことをして、大きな罪を犯しました。どうか、このしもべの咎を取り去ってください。私は本当に愚かなことをしました。」主はダビデの先見者ガドに告げられた。「行ってダビデに告げよ。『主はこう言われる。わたしがあなたに示す三つのことがある。そのうちの一つを選べ。わたしはあなたに対してそれを行う。』」……ダビデはガドに言った。「それは私には非常に辛いことです。私を主の手に陥らせてください。主のあわれみは深いからです。私が人の手には陥らないようにしてください。」
主はイスラエルに疫病を下されたので、イスラエルのうち七万人が倒れた。神はエルサレムを滅ぼそうと、御使いを遣わされた。主は御使いが滅ぼしているのを見て、わざわいを下すことを思い直し、滅ぼす御使いに言われた。「もう十分だ。手を引け。」主の使いは、エブス人オルナンの打ち場の傍らに立っていた。……ダビデは神に言った。「民を数えよと命じたのは私ではありませんか。罪があるのはこの私です。私が悪を行ったのです。この羊の群れがいったい何をしたというのでしょう。わが神、主よ。どうか、あなたの御手が、私と私の父の家に下りますように。あなたの民を疫病に渡さないでください。」……
ダビデは、ガドが主の御名によって語ったことばにしたがって上って行った。…ダビデはオルナンに言った。「この打ち場の地所を私に譲っていただきたい。そこに主のために祭壇を建てたい。……いや、私はどうしても十分な金額で買いたい。あなたのものを主に献げるわけにはいかない。……」そしてダビデは、その地所の代金として、金の重さで六百シェケルをオルナンに支払った。ダビデは、そこに主のために祭壇を築き、全焼のささげ物と交わりのいけにえを献げ、主を呼んだ。主は、全焼のささげ物の祭壇の上に天から火を下し、彼に答えられた。主が御使いに命じられたので、御使いは剣をさやに収めた。
歴代誌第一21:1-27(新改訳2017)


冒頭に引用したくだりには、サタンの誘惑に負けたダビデが自国の軍事力を見積もるために人口調査を命じ、その結果を知った後、神の御旨を損なう大きな罪を犯したことに自ら気づき、主に赦しを求めた結果、主がどのようにしてダビデを赦されたかが記されています。
歴代誌でも、また、この出来事を記した並行箇所のサムエル記第二24章にも記されているように、主の怒りが、イスラエルに向かって燃え上がったのは、神ご自身が制定されたダビデの王権に対する国内の反逆に対してであったことから、ダビデが不遜の罪を犯す前に、神の憤りはすでにイスラエルに対して向けられていたのでした。
しかし、王ダビデが従者の懸念を押し切って人口調査を強要したことは、神の御旨に反逆する危険なことでした。

軍事力を見積もる行為は、ダビデが神の力より、この世の手段や自らの達成をより信頼したことを示すもので、不遜と不信仰の罪が神の不快を引き起こしたのでした。神は懲らしめとして三つの手段、―国家に下る三年間の飢饉、三ヶ月間の敵の攻撃、三日間の疫病― を示され、国家の支配者、王であるダビデ自身が神の裁きの手段を選ぶことを許されました。憐れみ深い主にすべてを託してダビデは、人によってではなく、主ご自身によって懲らしめられることを選んだので、神はイスラエルに疫病を起こされました。
七万人もの民が滅ぼされたのを見、無実な民にこれ以上災いが下らないようにと執り成し、自らの罪の赦しを願ったダビデに応え、神はモリヤの山の尾根上のオルナンの打ち場で災いを下すのを止められ、エルサレムに災いが及ぶことは食い止められました。神が下された疫病がイスラエルの北から南下し、破壊の御使いがまさにエルサレム上空に来たとき、神はダビデを赦し、その場でそれ以上の破壊を断ち切られたのでした。

神は預言者ガドを通してダビデに、神の憐みが顕されたその場所に祭壇を築き、贖いのいけにえを献げるようにと命じられました。ダビデは、エルサレムの一市民であったオルナンから打ち場とその周辺の地所を買い、全焼と和解のいけにえを献げ、神が天からの火を送って、それらを受け入れられたので、民は疫病から解放されたのでした。
その後、ソロモンが最初のエルサレム神殿を築いたのは、このダビデの町のオルナンの打ち場でした。神はこのようにしてダビデ王国と神殿の建設予定地は打たないで、ダビデの子孫の支配下に置かれ、神の定められた場所、定められたときに神殿を建てるようにと、ダビデを導かれたのでした。この打ち場は、また、この出来事のほぼ九百年前、神が、ひとり子イサクをいけにえとして献げようとしたアブラハムの信仰に応えてご介入され、ご自身がいけにえを備えてくださったまさに同じ場所アドナイ・イルエ…主の山には備えがあるでした。
地理的には、このモリヤの地の山を上り、頂上から北を見下ろすと、キリストが埋葬されたとされる「園の墓」が眼下にあります。

201919日、エルサレムの「神殿の丘」の専門家でラビのハリー・モスコフ師が、ユダヤ教資料と考古学とを二十年研究した結果たどり着いた結論、―「今日、イスラム教の岩のドームとアル・アクサモスクとが建っている『神殿の丘』と呼ばれる場所は、かつてのエルサレム第一、第二神殿が建てられていた場所ではない」― を公示し、ユダヤ人のエルサレム第三神殿を、現存のイスラム教の建物を損なうことなく、いつでも「神殿の丘」の南西部、「ダビデの町」、すなわち、聖書が明記しているオルナンの打ち場に建てることができることを訴えました。
現在、ラビやイスラエルの指導者たちはこの可能性を検討中で、イスラエル当局の認可次第で、すぐにでも平和裏に第三神殿が建てられる可能性が強くなってきました。

二、三年前からイスラエルでは、いけにえ制度の模擬的実践が行われており、20181210日のハヌカの祭りの最終日には、第三神殿のための石の祭壇奉献の儀式をはじめ、神殿聖具の奉献がエルサレム旧市街地の城壁の外で南米からの七十人の諸国民を招いて、公式行事として行われました。神殿本体と至聖所に置かれる「証しの箱」を除けば、イスラエルの祭司制度の再現のための備えはすべてそろっており、ユダヤ人が祈りをささげることが許されている「嘆きの壁」と呼ばれる西壁の地下には、新しいシナゴグや長老たちの会議室も建設済みで、神殿本体の建設はすでに長く待たれています。
しかし、伝統的な「神殿の丘」が紛れもなく聖書の語るオルナンの打ち場との見解も根強いので、果たして、神殿建設着工がイスラエル国家誕生七十周年の2019年に始まるかどうかは、ユダヤ人だけでなく、多くの人たちの関心の的です。

124日、2019年の「終末時計」の時刻、―人類滅亡までに残された残り時間の象徴的表示―が昨年と同じ残り二分で維持されることになったことが発表されました。
地球温暖化、サイバーテロや虚偽報道、情報過多等であおられる危機感が過去最大規模に達していることが強調され、現状は「新異常状態」と、警告されました。
確かに、年ごとに、偽造ニュースから偽造ビデオや偽造画像まで真偽の見分けがつけがたい虚偽報道が氾濫していますが、117日にも、公になったトランプ大統領の中東和平計画が「虚偽報道か、あるいは、おなじみの妄想か」と題したネット記事が載せられていました。

ある米国高官がワシントンで計画されていることを簡単に報告したことに基づいて書かれた記事ですが、これらの詳細が真実であると判明すれば、ユダヤとサマリヤで大規模なユダヤ人コミュニティが併合され、残る地にパレスチナ国家が創設されることになります。エルサレムは東西で分割され、近隣のほとんどのアラブ諸国がパレスチナ国家の一部となる計画で、比較的小規模なユダヤ人コミュニティはその地から退去させられることはないようですが、計画案制定以降は建築許可が発行されなくなり、しかも、そのコミュニティがイスラエルかパレスチナのいずれに所属することになるのかは定かでないというものです。
その計画では、パレスチナ人が現在支配しているイスラエルの地の二倍以上を獲得することになりますが、エルサレムの神殿の丘界隈の支配はイスラエルにも委ねられます。イスラエルは、エルサレムの旧市街地、神殿の丘、その東方のオリーブ山、西壁を含む、聖なる盆地を、パレスチナ国家、ヨルダン王国、その他の国々と共同管理するという条件下で支配することになるのです。

このような報告が公表されたことに対して、ホワイトハウス特使のジェイソン・グリーンブラット氏は「イスラエルの報告書は正確ではない。計画の内容についての憶測は役に立たない。その計画を知っている人はほとんどいない」と語り、米国のイスラエル大使デイビッド・フリードマン氏によれば、この計画は49日のイスラエル総選挙後までは公開されないとのことです。
時期尚早に公表されてしまった、あるいは、虚偽報道のこの計画案、―パレスチナ国家に西岸地区の8590%の完全主権を提供と、近隣アラブ諸国の首都としてのエルサレム― はトランプ大統領からイスラエルが期待していたことにそぐわないので、イスラエルには驚きが広がっているようです。
トランプ政権のイスラエル・パレスチナ紛争への関与で、今日に至るまで、ほとんどのイスラエル人がパレスチナとの平和里な解決策を期待してきましたが、よもやパレスチナ自治政府に、イスラエルの聖書の中心地のほとんどに及ぶ完全な主権を提供し、なおかつ、首都エルサレム分割を提供することによる妥協案が提案されていようとは、考えもしなかったことかもしれません。この報告が虚偽か否かは49日以降に判明するわけですが、他の見解もあるようです。

それは、トランプ政権が、和平協定の当事国、パレスチナとイスラエルのこの報告に対する反応、―どの条項が強く拒否され、どの条項がある程度受け入れられそうか―を見て、最終案を練るため、テストのための気球を打ち上げたという考えです。
また、これまで自らの要求の百パーセントを満たさないような提案には目も向けようとしなかったパレスチナ自治政府に、乗り気にさせるような非常に魅力的な条項を盛り込み、和平協定へと導く策との受け止め方もあるようです。
しかし、いずれにせよ、もし今日の「神殿の丘」が本当のエルサレム神殿域ではないのであれば、イスラエルは、エルサレムのロビンソン・アーチ以南の「ダビデの町」にいつでも神殿を建てることができ、聖書の中心地のほとんどに及ぶ完全な主権を提供する犠牲を払ってまで、「神殿の丘」に固執する必要はないことになるのです。