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第248号  歴代誌第二17-20章 

神の御旨に反した同盟がもたらす裁き

英国では6月23日、EU残存か離脱かの国民投票が行われます。英国の霊的指導者たちは、神はユダの王ヨシャパテの出来事を通して、英国民と指導者に、現状をこの世の視点からではなく、神の視点から正しく捉え、神に反逆するこの世との迎合策ではなく神からの祝福に与る道を選ぶようにと語っておられると、訴えています。聖書に記されているイスラエル史を創造者なる神と被造物なる人との関係で捉えるなら、神がイスラエルに語られたことは、全異邦人諸国にも語られたと捉えることができ、神の原則は一貫して英国にも日本にも適用できるのです...
主はヨシャパテとともにおられた。彼がその先祖ダビデの最初の道に歩んで、バアルに求めず、その父の神に求め、その命令に従って歩み、イスラエルのしわざにならわなかったからである…
こうして、ヨシャパテには富と誉れとが豊かに与えられたが、彼はアハブと縁を結んだ…こうして、イスラエルの王とユダの王ヨシャパテは、ラモテ・ギルアデに攻め上った…
ユダの王ヨシャパテは無事に自分の家に帰り、エルサレムに戻った。すると、先見者ハナニの子エフーが彼の前に出向いて来て、ヨシャパテ王に言った。「悪者を助けるべきでしょうか。あなたは主を憎む者たちを愛してよいのでしょうか。これによって、あなたの上に、主の前から怒りが下ります。しかし、あなたには、良いことも幾つか見られます。あなたはこの地からアシェラ像を除き去り、心を定めて常に神を求めて来られました…
出陣のとき、ヨシャパテは立ち上がって言った。「ユダおよび、エルサレムの住民よ…あなたがたの神、主を信じ、忠誠を示しなさい。その預言者を信じ、勝利を得なさい。」…彼らが喜びの声、賛美の声をあげ始めたとき、主は伏兵を設け、ユダに攻めて来たアモン人、モアブ人、セイル山の人々を襲わせたので、彼らは打ち負かされた…地のすべての王国が、主はイスラエルの敵と戦われたということを聞いたとき、神の恐れが彼らの上に臨んだ。このようなわけで、ヨシャパテの治世は平穏であった。彼の神は、周囲の者から守って、彼に安息を与えられた…
その後、ユダの王ヨシャパテは、悪事を行ったイスラエルの王アハズヤと同盟を結んだ。彼はタルシシュへ行くための船団をつくるためにこの王と結んだ…そのとき…エリエゼルがヨシャパテに向かって預言し、こう言った。「あなたがアハズヤと同盟を結んだので、主はあなたの造ったものをうちこわされました。」そうこうするうちに、船は難破し、タルシシュへそのまま行くことができなかった。          
歴代誌第二17-20章
旧新約両聖書は、イスラエル史を通して、また、神の教えを通して、霊的に不一致な者との同盟が破壊をもたらすことを繰り返し警告しています。ユダの王ヨシャパテは主の道からそれることなく、御旨に従順に二十五年間を治めた善王と評価されていますが、神の御心を損ねる同盟を神に敵対するイスラエルの王と二度も結ぶことによって、ユダ王国を危機におとしめたのでした。最初の同盟は息子をアハブの娘と結婚させ、イスラエルのアハブ王家と縁を結ぶという大きな過ちで、迎合策に甘んじたため、アハブの身代わりにラモテ・ギルアデであわや生命を落とす危機にさらされたのでした。この戦いでアハブは戦死しましたが、アハブ家との同盟関係を通して、邪悪な霊はヨシャパテの生涯に悪影響を及ぼしたのでした。新約時代、使徒パウロは
「不信者と、つり合わぬくびきをいっしょにつけてはいけません。正義と不法とに、どんなつながりがあるでしょう。光と暗やみとに、どんな交わりがあるでしょう。キリストとベリアルとに、何の調和があるでしょう。信者と不信者とに、何のかかわりがあるでしょう」(コリント人第二6:14-15)
と警告しましたが、「不信者」とは、神を知らない未信者のことではなく、キリストを知って離れ、反逆している反キリストのことです。背後に「ベリアル」、すなわち、サタンとその手下の悪霊が関わっているので、霊的に不一致な同盟は人の魂をも脅かすことになるのです。

主は、戦場で助けを求めたヨシャパテを危機から救われ、無事エルサレムに戻されました。ヨシャパテは、そのとき神から遣わされた預言者エフーの忠告を受け入れ、悔い改めたのでした。そのことは、民を主に立ち返らせるため自ら陣頭指揮をとったり、主のために働く裁き司を各地に任命したり、レビ人と祭司に、主を恐れ、忠実に、全き心をもって奉仕するようにと訓令するなど、その後の王の実践躬行な政策に表れています。しばらくして、そのように主の御旨にかなった政治を行っていたヨシャパテに、正念場となる事件が持ち上がります。モアブ人とアモン人の大群による襲撃です。ヨシャパテは主の宮で、ユダの人々の中に立って、
 「私たちの父祖の神、主よ。あなたは天におられる神であり、また、あなたはすべての異邦の王国を支配なさる方ではありませんか。あなたの御手には力があり、勢いがあります。だれも、あなたと対抗して持ちこたえうる者はありません」
と神を正しく認識し、
「このおびただしい大軍に当たる力は、私たちにはありません…ただ、あなたにわたしたちの目を注ぐのみです」
と、全信頼を神に置き、苦難の中から呼ばわったのでした。そのとき、預言者を通して主が語られたのは、
「この戦いではあなたがたが戦うのではない。しっかり立って動かずにいよ。あなたがたとともにいる主の救いを見よ」
との力強い勝利の宣言でした。民と王、預言者が一丸となって主に信頼した結果は、敵の同士打ちによる自滅で、ユダの兵士が物見の塔から敵の大群の方向を見渡すと、野には死体が転がっているだけで、逃れた者は一人もいなかったのでした。神ご自身がイスラエルの敵と戦われたという情報は瞬く間に諸国に広まり、諸国民の間に主に対する恐れが生じ、ヨシャパテの治世には平安が訪れ、このようにして神に信頼する支配者の国は祝福されたのでした。

しかし、ヨシャパテの話はこれで終わるのではなく、二度目の同盟による罪の繰り返しで締めくくられています。晩年ヨシャパテが結んだ、父アハブに劣らず「悪事を行ったイスラエルの王アハズヤ」とのこの同盟は、最初の同盟と同じく霊的に一致しない同盟、「ベリアル」との関わりで、これは、タルシシュの船団をつくり、金を得るためにオフィルに行くことを目的としたビジネス同盟でした。すべての領域において必要なものを備えてくださる主の祝福を十分味わったヨシャパテが、さらに富を得ることへとおびき寄せられたのは、婚姻関係によってもたらされたアハブ家との霊的関係が断ち切られていなかったため、誇りと貪欲の霊がまだヨシャパテを支配していたことによるものと考えられます。
聖書は、ヨシャパテがこのように再度同盟を結ぶ罠に陥った理由を明確にしていませんが、この再度の同盟も神の御旨では決してなかったことを、神がその船を難破させる裁きを下されたことで明確にしています。神の裁きによってビジネスは失敗に終わり、それ以上罪が繰り返されることがないように神はほどなくしてヨシャパテを死へと導かれたのでした。善で始まった王の人生の終わりがこのような結末に終わったことから、後世、聖書を通して神の御旨を知る私たちは教訓を学ぶことができるのです。

先月号で触れましたが、英国では6月23日、EU残存か離脱かの国民投票が行われます。英国の霊的指導者たちは、神はこのヨシャパテの出来事を通して、英国民と指導者に、現状をこの世の視点からではなく、神の視点から正しく捉え、神に反逆するこの世との迎合策ではなく神からの祝福に与る道を選ぶようにと語っておられると、訴えています。
聖書に記されているイスラエル史を創造者なる神と被造物なる人との関係で捉えるなら、神がイスラエルに語られたことは、全異邦人諸国にも語られたと捉えることができ、神の原則は一貫して英国にも日本にも適用できるのです。日本でも早晩、平和憲法九条の維持か放棄かを国民投票で決定するときが来るでしょうから、また、諸外国との軍事同盟や経済同盟、諸宗教間の宗教同盟、統合を聖書に照らしてどのように判断するかの選択に迫られるときが来るでしょうから、今回の英国の動きは注目に値します。

1215年ジョン王が承認して成立した大憲章「マグナ・カルタ」の理念が維持されてきた英国は、国王が聖書に手を置いて神に誓う立憲君主国として、今日に至っています。建国当初から、神の言葉と真理のために多くの殉教者を出してきた英国では、十八世紀にはウエスレーによりリバイバルが起こり、十九世紀にはハドソン・テーラーをはじめ多くの伝道者を世界宣教に送り、また、長い奴隷制度に終止符を打ったウイリアム・ウイルバフォースは、政界で大きな影響力を及ぼしたキリスト者でした。二十世紀の二度に亘る世界大戦では、反セム主義的イデオロギーを擁護した侵略国に対抗して同盟国を勝利に導いた立役者は英国で、この間、英国民はヨシャパテと同じような神の奇蹟を何度も経験したと言われています。

その一つは、第二次世界大戦初期、1940年5月のダンケルクの激戦で、三十万人の英国軍は、電撃戦で猛威を振るっていたドイツ軍に北フランスのダンケルクに追いつめられ、四方を包囲されたのでした。せいぜい二万人の生存しか見込めないと悲観した英国首相ウインストン・チャーチルは、英国民に「望みは一つしかない。英国軍のために全員で祈ろう!」と奨励、5月26日に、英国王ジョージ六世は「救出のための総国民祈祷日」を宣言、カンタベリー大司教はウエストミンスター寺院で祈祷を始め、この嘆願は英国全土に放送されたのです。英国民はそれぞれの場で立ち止まり祈り、国家一丸となっての祈りが神に向けられたのでした。
その結果は、祈りを聞かれた神の応答、ダンケルクに起こった驚くべき奇蹟でした。フランス北岸、ドーバー海峡に面したダンケルクの海岸に霧が発生し始め、濃霧のためドイツ空軍は全く離陸できず、濃霧に包まれた九日間に、三十三万五千人の英国軍は撤退船に乗り込み、対岸の英国の地に無事帰還することができたのでした。チャーチルはそれを「奇蹟の救出」と呼び、大司教は「神はなぜ私たちを救ってくださったのだろうか。それは、私たち英国民には、神の完全な御国を来たらしめるために主に仕えるようにとの御目的があるからだ!」と明言したのでした。

残念ながら、大司教ウイリアム・テンプルの言葉は「とき」とともに忘れられ、今日の英国は、1973年に欧州経済共同体(EEC)に加盟して以来、欧州連合(EU)の本部の置かれているベルギー、ブリュッセルの精神に大きく影響され、軍事、政治、経済、宗教の一体化の渦の中にどんどん引きこまれているのです。英国の霊的指導者は、各国家に独自の歴史、伝統、文化、国土、境界を与えられた神が英国民に託された使命を、全うすることの意義、大切さを見失ってはならないことを強調、神の御旨に正しく答えるためには、反キリスト精神に立っているEUからの離脱は必須との立場に立っているのです。
EUの実態はほとんど報道されていないのですが、EUを、預言者ダニエルが預言した終末末期に現れる十の国による連合王国、すなわち、復興ローマ帝国とみなす霊的指導者は多いのです。EUの拠点都市ストラスブールに建てられた欧州議会の本会議場の建物は、バベルの塔の現代版として意識的にデザインされたもので、上層階が未完成であるかのように構成された円形の建物は、建築中の建物の足場を思わせる張り出し部分が各階に取りつけられた外観を呈し、当初のバベルの塔の精神、神に反抗する人の力による達成と誇りをそのまま受け継いでいるかのようです。また、ブリュッセルのEUの事務所の外庭には、黙示録17、18章の「大淫婦…すべての淫婦と地の憎むべきものとの母、大バビロン」をほうふつとさせるデザインの「雄牛に変装したゼウス神(ギリシャの神々の支配者)の背に美女エウロパが乗っている彫像」が置かれています。
しかし、聖書に照らせば、この「エウロパ」(すなわち、ヨーロッパ)の隠喩は、究極的には反キリストによるヨーロッパの政治的、霊的、財政的崩壊を予兆しているのです。