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第228号 詩篇122篇、128篇

平和への訴え

真の平和は軍備、核保有、戦争によっては決して達成できません。動機が何であれ、「武器を取る者はみな武器で滅びる」からです。愛の心から生みだされる「生命への尊厳」以外に、真の平和は達成できません。「生命への尊厳」は被造物に「生命」を授け、維持しておられる、永久に真実な神を受け入れ、畏れることによって初めて、新生の心に生じるのです。

人々が私に、「さあ、主の家に行こう」と言ったとき、私は喜んだ。エルサレムよ。私たちの足は、おまえの門のうちに立っている。エルサレム、それは、よくまとめられた町として建てられている。そこに、多くの部族、主の部族が、上って来る。イスラエルのあかしとして、主の御名に感謝するために。そこには、さばきの座、ダビデの家の王座があったからだ。エルサレムの平和のために祈れ。「おまえを愛する人々が栄えるように。おまえの城壁のうちには、平和があるように。おまえの宮殿のうちには、繁栄があるように。」私の兄弟、私の友人のために、さあ、私は言おう。「おまえのうちに平和があるように。」私たちの神、主の家のために、私は、おまえの繁栄を求めよう。 
詩篇122篇
幸いなことよ。すべて主を恐れ、主の道を歩む者は。あなたは、自分の手の勤労の実を食べるとき、幸福で、しあわせであろう。あなたの妻は、あなたの家の奥にいて、豊かに実を結ぶぶどうの木のようだ。あなたの子らは、あなたの食卓を囲んで、オリーブの木を囲む若木のようだ。見よ。主を恐れる人は、確かに、このように祝福を受ける。主はシオンからあなたを祝福される。あなたは、いのちの日の限り、エルサレムの繁栄を見よ。あなたの子らの子たちを見よ。イスラエルの上に平和があるように。               
詩篇128篇

  エルサレムの平和のために祈るようにとの神の言葉は聖書中に満ちています。エルサレムの平和は、全世界の平和につながるからです。神に忠実なしもべたちが、古来からどんなにこの祈りを唱えてきたことか、しかし現状は正反対で、エルサレムを中心に、イスラエル、中東での戦闘が激化するばかりです。祈っても祈っても平和が訪れたことのないエルサレムのために、神はどのような祈りを求めておられるのでしょうか。

  米国のオバマ大統領は、イラク、シリアに軍事介入しないという過去数年間の政策を劇的に逆転し、9月23日、スンニ派アラブ諸国五ヶ国とともに、米国、イスラエルとアラブ諸国の安全のために、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」撲滅の空爆に踏み切りました。地中海を隔てて中東と向き合い、現実問題として、イスラム国による残虐行為の脅威にさらされているヨーロッパ諸国は、米国の要請に応え、イラク政府から正式に要請のあったイラク国内での空爆に参加する決意を相次いで表明しました。今回の米国主導の同盟には、アラブ諸国が加わっていることが特徴的で、同盟軍は数週間のうちにシリヤ空爆に移り、イスラム国相手に数年に亘る軍事行動を維持させていく必要に迫られるのではないかと言われています。

  この同盟は、暴力行為で勢力を拡大しつつあるイスラム国に対抗して、日頃は言い争っているペルシャ湾岸のアラブ諸国が団結したという点で意義深い一方で、イスラム国への志願兵が西欧を含む全世界からの若者であることは深刻に危惧されています。戦争の怖さを知らず、実地体験のない若者が、志願するとすぐ第一線での軍事行動に移されることに武勇心をかき立てられ、安易な決断に走る傾向は今日のインスタント志向の世相を反映しています。画質が美しく、実物に近い臨場感が味わえるインターネット、ゲーム、アニメ等のデジタルメディアの発達は、経験の浅い幼児から若者たちに仮想現実感をもたらし、現実と架空の区別をつけられない新しい情報社会環境に育った者たちの短絡的な行動の背景に多大な影響を与えていると言っても過言ではないでしょう。性や暴力に関する情報が氾濫し、子どもを対象とする暴力的性犯罪がマスコミをにぎわしている今日は、最先端の文化だと安易に助長してきたことが、現実には恐ろしい弊害をもたらしていることを証ししているのです。

  今日、世界中の国々が相次ぐ天災、人災で大きく揺さぶられています。国土の至る所に活火山があり、地形上、地震、台風、洪水、津波の害に常時さらされ、脅かされている日本も、平和憲法改変に向け、周辺的な法案を着々と閣議決定させ、まさに自然災害の上に人災を増し加えようとしている状態にあります。無神論国の日本が敗戦後も自治国家維持が許され、経済的急成長を遂げることができたのは、平和憲法を守ってきたからでした。キリスト教を国教とする先進諸国が核保有国となり、今日に至るまで、諸国との同盟と軍事力で自国を守る政策に終始してきたのに対し、憲法九条がゆえに、軍備、参戦を拒絶してきた日本は知らないところで、図らずも平和を愛される神の御旨にかなう道を歩んできたのでした。

  聖書には、神の御旨を損なう背信の神の民より、正しい良心に従う異邦の民を顧みてくださる慈しみの神、道義の神が至る所で語られていますが、これまで六十九年間、天災、人災から守られてきた日本が歩むべき道は、その背後におられ、今日まで導いてくださった真の神を今認め、受け入れ、従う以外にありません。諸外国との同盟と軍事力に依存する政策は、日本だけでなく、その道を歩むすべての国々に究極的な滅びをもたらすだけです。いつ致命的な天災が起こってもおかしくない日本には、天地を創造し、大自然を支配しておられる唯一真の神に拠り頼む以外に、生き残るすべはないのです。神の御旨を損なう政策を自ら選べば、それは墓穴を掘る行為で、日本はすべてを失うことになるでしょう。

日本がこんな国になってしまって悲しくて仕方ない。特定秘密保護法を先に作って、次は集団的自衛権。『戦争だから』と自由に発言できない時代はすぐそこです
と訴えるなかにし礼さんの詠んだ詩を、文末に引用しました。何度も生命の危険にさらされたと言われる礼さんが近著『天皇と日本国憲法 反戦と抵抗のための文化論』の中に書いたという
日本国憲法は世界に誇る芸術作品
は、聖書的ともいえる洞察の深い言葉です。今年七月一日にあわただしく、むしろ一方的に、閣議決定された「集団的自衛権行使容認」によって一番影響を受けるのは、今後の日本を担っていく若者たちである、ところが終戦六十九年経った今日、平和を満喫して育ったその若い世代「平和の申し子」の中には、戦争をしたくないという思いに後ろめたさを感じる者がいることを指摘して、礼さんは、
弱くあることは勇気あることなんです
と語っています。

世論、世相に押し流される激動の時代に、真理の書『聖書』に基づいて、自分の立場を明確に主張できる勇気ある若者以外に、未来の日本を支えていくことのできる者はいないでしょう。世界の強国の命令一下、同盟に加わることによっては、世界平和は決して達成されません。戦争に加担しない立場に踏みとどまることによってのみ、唯一の被爆国日本は、真の神によって、世界中に平和を推進する働き人になることができるのです。聖書が主張する「平和主義」は死守しなければならないのです。そのとき、真の神は、必ず、無神論国日本をご自分の御手によってあらゆる災いから奇蹟的に守り、ついには、神の真のしもべへと覚醒、開眼させてくださることでしょう。エルサレムの平和、すなわち、全世界の平和のために、神が求めておられる祈りを挙げてみました。

  まず何よりも、神の民イスラエルの開眼、神ヤーウェの約束されたメシヤがナザレ人イエス・キリストであることを受け入れ、
権力によらず、能力によらず…霊によって (ゼカリヤ書4:6)、
イスラエルが守られますように。
神の民の敵の作戦が無に帰され、悪を行うすべての者の上に神の裁きが下されますように(ローマ人2:6-11)。
過激派組織撲滅のために団結したイスラム国家の間に、真の平和をもたらす方への霊の覚醒が起こりますように。
迫害にさらされているユダヤ人、キリスト者をはじめ、真摯な異教徒たちの叫びに主が御言葉を通して、あるいは、ご自身を顕してくださることによって、諸国民の霊の救いが起こりますように。
神の民を相手に武器を取る者が恥じらい、恐れるような神のご介入がありますように(申命記2:25、歴代誌第二20:29ほか)。
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若者よ 戦場へ行くな  

作家・作詞家のなかにし礼さんの詩を全文引用 (毎日新聞夕刊「特集ワイド」)
平和の申し子たちへ! 
泣きながら抵抗を始めよう

二〇一四年七月一日火曜日
集団的自衛権が閣議決定された
この日 日本の誇るべき
たった一つの宝物
平和憲法は粉砕された
つまり君たち若者もまた
圧殺されたのである
こんな憲法違反にたいして
最高裁はなんの文句も言わない
かくして君たちの日本は
その長い歴史の中の
どんな時代よりも
禍々(まがまが)しい
暗黒時代へともどっていく
そしてまたあの
醜悪と愚劣 残酷と恐怖の
戦争が始まるだろう
ああ、若き友たちよ!
巨大な歯車がひとたび
ぐらっと回りはじめたら最後
君もその中に巻き込まれる
いやがおうでも巻き込まれる

しかし
君に戦う理由などあるのか
国のため? 大義のため?
そんなもののために
君は銃で人を狙えるのか
君は銃剣で人を刺せるのか
君は人々の上に爆弾を落とせるのか
若き友たちよ!
君は戦場に行ってはならない
なぜなら君は戦争にむいて
ないからだ
世界史上類例のない
六十九年間も平和がつづいた
理想の国に生まれたんだもの
平和しか知らないんだ
平和の申し子なんだ
平和こそが君の故郷であり
生活であり存在理由なんだ
平和ぼけ? 
なんとでも言わしておけ
戦争なんか真っ平ごめんだ
人殺しどころか喧嘩(けんか)もしたくない
たとえ国家といえども
俺の人生にかまわないでくれ
俺は臆病なんだ
俺は弱虫なんだ
卑怯者(ひきょうもの)? そうかもしれない
しかし俺は平和が好きなんだ
それのどこが悪い?
弱くあることも
勇気のいることなんだぜ
そう言って胸をはれば
なにか清々(すがすが)しい風が吹くじゃないか
怖(おそ)れるものはなにもない
愛する平和の申し子たちよ
この世に生まれ出た時
君は命の歓喜の産声をあげた
君の命よりも大切なものはない
生き抜かなければならない
死んではならない
が 殺してもいけない
だから今こそ!
もっともか弱きものとして
産声をあげる赤児のように
泣きながら抵抗を始めよう
泣きながら抵抗をしつづけるのだ
泣くことを一生やめてはならない
平和のために!