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第229号 エゼキエル書21:2-7、24:14-24

エボラ出血熱勃発、感染拡大の今後の見通しは? 

人畜共通感染症を何年もかけて調べている、米国のあるサイエンスライターは、最悪を迎える前のまだ始まりだという…
今起こっているこの疫病の蔓延は、聖書の疫病を思い起こさせるが…


「人の子よ。顔をエルサレムに向け、聖所に向かって語りかけよ。イスラエルの地に向かって預言せよ…わたしは…あなたのうちから、正しい者も悪者も断ち滅ぼす。わたしがあなたのうちから、正しい者も悪者も断ち滅ぼすために、わたしの剣はさやを離れて、ネゲブから北まですべての者に立ち向かう。このとき、すべての者は、主であるわたしが剣をさやから抜いたことを知ろう。剣はもう、さやに納められない。』人の子よ。嘆け。彼らが見ているところで腰が砕けるほど激しく嘆け。彼らがあなたに『なぜあなたは嘆くのか』と言うなら、そのとき、あなたは言え。『この知らせのためだ。それが来ると、すべての者は心がしなえ、すべての者は気力を失い、みな意気消沈し、だれのひざも震える。今、それが来る。それは実現する。―神である主の御告げ―』」
「人の子よ。見よ。わたしは一打ちで、あなたの愛する者を取り去る。嘆くな。泣くな。涙を流すな。声をたてずに悲しめ。死んだ者のために喪に服するな。頭に布を巻きつけ、足にサンダルをはけ。口ひげをおおってはならない。人々からのパンを食べてはならない。」その朝、私は民に語ったが、夕方、私の妻が死んだ。翌朝、私は命じられたとおりにした。すると、民は私に尋ねた。「あなたがしていることは、私たちにとってどんな意味があるのか、説明してくれませんか。」…『…見よ。わたしは、あなたがたの力の誇りであり、あなたがたが愛し、心に慕っているわたしの聖所を、汚す。あなたがたが見捨てた息子や娘たちは剣で倒される…エゼキエルはあなたがたのためのしるしとなり、彼がしたとおりを、あなたがたもするようになる。このとき、あなたがたは、わたしが神、主であることを知ろう。               
エゼキエル書21:2-7、24:14-24

  エゼキエル書20-24章は、エルサレムに下る裁きの最後通告が、背信のイスラエル史を神の視点から振り返ることによって告知されている箇所です。感情と行為を通して象徴的に預言を告げることを神から命じられた預言者エゼキエルが、私情を二の次にして、預言者としての役割に徹し、背信の民、同胞に神命の重大さを訴えています。憐れみと愛の神が警告を重ねても背信の民が耳を傾けないとき何が起こるのかが、この段落で取り扱われており、この文脈では、神の裁きの手段としてバビロンがユダの民を襲い、神は、民が残忍な敵勢に踏みにじられ、虐待、虐殺されるのを許されます。神はそのような厳しい裁きを
おまえは自分の流した血で罪に定められ、自分の造った偶像で身を汚し、自分の刑罰の日を近づかせ、自分の刑罰の年を来させた。だから、わたしはおまえを諸国の民のそしりとし、すべての国の笑いぐさとする(22:4)
すなわち、民への裁きが、蒔いた種の刈り取りの形で下ることを説明されたのでした。人々は神が、最愛のもの、拠り所を容赦なく奪い、安泰と思っているところに破壊をもたらし、もはや当たり前の生活さえ営むことを許されなくなったとき初めて、エゼキエルが象徴的行為で語った預言の意味を悟り、真の神が前もって「しるし」を送られたことに気づくのです。

  インターネットの普及によって、世界中の情報を一瞬のうちに得ることのできる今日は、一国家的レベルを超えた世界的な出来事が私たちの回りで起こっているかのように感じられる時代です。十月に入り、西アフリカのエボラ出血熱感染拡大と中東シリヤ、イラクでのIS国の恐怖統治下でのキリスト者や少数派イスラム教徒迫害が世界中のキリスト者の祈りの課題になっています。
エボラ出血熱を阻止する予防接種がないため、十月下旬現在、感染者、感染の疑いのある者の数は一万人を超え、死者数は五千人近くに及んでいます。現在の感染の勢いでは、十二月には感染者が十倍近くの毎週五千~一万人ずつ増える可能性も予測されており、国境を越えて多くの人たちが移動する今日、医療現場での二次感染だけでなく、国外での感染も危惧され、実際すでに、スペイン、米国などアフリカ以外の六ヶ国にも及んでいます。また、感染が拡大しているギニア、リベリア、シエラレオネの三国に加え、隣国のマリでも死者が出、拡大が危ぶまれています。

  このような状況下で、十月半ば、「ウイルスより速く拡大するパニック」(BBC)と題して、ソーシャルメディアを通しての誤報、うわさの伝播力の速さ、大きさが伝えられました。チリの最も忙しい病院の一つで、拡声器を通して「エボラ出血熱に感染したと思われる患者が発生しました。どうぞ、他の病院をお訪ねください」と警報が出されたため、患者たちは口をおおい、逃げ去る出来事が起こったのでした。携帯電話カメラでその警報を記録した女性が「チリにエボラ出血熱事例の可能性」と題してユーチューブに送り、それがウイルス感染をもしのぐ勢いで広まり、公表されたビデオは二十四時間以内に十二万回、閲覧されたそうです。
さらに、ユーチューブからツイッターにうわさは広まり、ツイッターのキーワード、“ハッシュタグ”は「チリにエボラ出血熱」として、翌日にかけて二十万回、用いられたのでした。そのうわさを耳にした主流メディア系列も、エボラ出血熱発生として報道を始める始末で、「感染の疑いがある」で始まった告知が、事実確認がなされないまま、尾ひれを付けて一瞬のうちに広がる事例となったのでした。
数時間後にチリの保健省が明らかにしたことは、当該患者が、エボラ出血熱の症例が確認されていない、アフリカ中西部にある「赤道ギニア共和国」に旅行したのを、多くのチリ人は感染が拡大した西アフリカの「ギニア共和国」と混同してしまったということで、ソーシャルメディアで一人歩きしたうわさ収拾に、チリ政府は迅速に対応できなかったのでした。幸いにも、当該患者はエボラ出血熱ではなくマラリアと診断され、この件は落着しました。

  同様な誤報は、他の国々でも起こり、エボラ出血熱にまつわる不穏なうわさは、西アフリカ以外で最初の感染者が確認されたスペインでも広がりました。多くの者たちが、首都マドリッドの一部に、政府制御下の秘密の隔離地帯があるという陰謀説を聞き、この偽りのニュース見出しがWhatsApp(ワッツアップ)を経て、フェイスブックに送られ、混乱が起こったのでした。
また、ブラジルでも、保健省が告知した「エボラ出血熱の疑い」が誤認警報となり、オンライン上で大混乱が起こったのです。同様に、ポルトガルのツイッターでは、用語「エボラ」が一日足らずのうちに、十二万回用いられたといいます。ブラジルではひき続いて、エボラ出血熱のウイルスを人種差別的にアフリカ人に関連づける偏見が流布し、米国でも、同じような偏見が瞬く間に広がったようです。

今起こっている現象は、何を物語っているのでしょうか

人畜共通感染症を何年もかけて調べている、米国のあるサイエンスライターは、この現象は短期に解決できる事例ではない、すなわち、現在のエボラ出血熱感染が制御されたとしても、根本的解決になるというわけではない、と警告しています。来年、あるいは再来年、また別のウイルス感染が発生、流行し、生命を脅かすであろうとの見通しを語り、私たちが関心を払うべきウイルスはエボラではなく、くしゃみや咳を通して呼吸器感染する動物由来の、より突然変異率の高い新ウイルスこそ恐るべき脅威であると唱えています。
このような特性に合うウイルス群はほんの小数とのことですが、このウイルス系がSARS (重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)をもたらし、最大の危険はインフルエンザで、他のどのウイルスよりも多くの何百万にも上る人命を奪う恐れは十分あるとのことです。空気感染しないエボラウイルスはまだ最悪を迎える前の予備段階に過ぎないのに、今回の現象ですでに、根拠のない恐れが国境封鎖、感染者の孤立化、感染の疑いのある者や国のボイコットなど「社会崩壊」を誘発しかねない状態をひき起こしたことから、遅かれ早かれ訪れるに違いない恐慌状態が憂慮されています。

このエボラ出血熱勃発は、聖書の疫病を思い起こさせます

隷属下に置かれていたイスラエルの民がエジプトから解放される直前の一年足らずの短期間にエジプトでは、次々と疫病が勃発、流行し、エジプト国内では多くの犠牲者が出ました。これらは、
その夜、わたしはエジプトの地を巡り、人をはじめ、家畜に至るまで、エジプトの地のすべての初子を打ち、また、エジプトの神々にさばきを下そう。わたしは主である
(出エジプト記12:12)
と主ご自身がモーセに明確に語られたように、エジプトの神々に対する真の神ヤーウェの裁きでした。
エジプト中に災いをもたらし、疫病の媒介となったカエル、ブヨ、アブ、家畜、イナゴほか、天体、自然現象はどれもみな崇拝の対象とされたエジプトの神々でした(『一人で学べる出エジプト記』p.59-90、補注15)。古代エジプトには、風の神、科学の神、医術の神、太陽の女神等々、軽く三十五を上回る神々が崇拝されていましたが、神ヤーウェはエジプトにさまざまな疫病を下すことによって、さまざまな領域の神々を滅ぼし、偶像神や物神の無力さをさらけ出されたのでした。エジプトの民は、信じていた偶像神、物神や神格化された天体や自然現象によって救われるどころか、苦しめられ、死へと導かれたのです。

  現代文明の時代に生きている私たちは、疫病からの解放を願って、自然崇拝、偶像崇拝に没頭した古代エジプト人を愚かしく思うかもしれませんが、私たちもエジプトの神々に代わる、現代版偽りの神々に依存している点で、大差ありません。現代医学技術、療法、医薬品、健康産業への依存はまさに人の手になるものが信仰の対象になり、崇められているも同然です。実際、二十世紀には、天然痘やポリオをはじめ、多くの病気の根絶が宣言され、今世紀も、遺伝性疾患や人のDNAを操作する領域にまで、また、三十八年前に発見されたエボラウイルスをはじめ、恐ろしい疫病根絶のための研究が続けられていますが、昨今の風潮は、科学が死そのものをも克服するという信念です。
すべての問題は科学で解決できると信じる科学万能主義は、天地、被造物、すべてを支配される神の存在を信じ、その御旨に従う者に、
もし、あなたがあなたの神、主の声に確かに聴き従い、主が正しいとみられることを行い、またその命令に耳を傾け、そのおきてをことごとく守るなら、わたしはエジプトに下したような病気を何一つあなたの上に下さない。わたしは主、あなたをいやす者である(出エジプト記15:26)
と宣言された真の神を、現代版の神々、―医学療法、医薬品ほか― に置き換えたのです。

  神は人が、高度な医療技術や薬品を開発し、治癒、健康維持、管理に有効に用いることを許してこられたので、多くの人たちは、不死という願望が自分たちの力によって達成される日が確実に来ると信じているようですが、他方で神は、撲滅されたとみなされたウイルスや病気の再現、今回のエボラ出血熱拡大のような世界的な脅威を通して人に警告を発し続けておられます。
医学的知識、技術がどんなに進化しようと、人の究極的な幸福、健康を約束する源では決してないこと、それらすべての手段を通して癒しをもたらされるのは神ご自身であることを語っておられるのです。冒頭のエゼキエル書からの引用箇所は、創造者なる神を無視し、我が道を行く反逆の諸国民にも適用できます。
背信の神の民に下ったと同じ神の裁きをこの世に宣告する最後通告は、全世界の「正しい者も悪者も断ち滅ぼす」ことによる全地の一掃で、この荒療治によってしか、聖めはもたらされないのです。